「Three Birds」工房訪問記
今回はThree Birdsを訪問し、山田さんに色々なお話を聞いてきました!
北欧ヴィンテージの家具屋からどう言う経緯で木工職人になられたのか…是非ご覧ください!
工房の成り立ち、そしてイレギュラーだった家具職人としてのスタート
ーー山田さんはいつから工房を始められたのでしょうか?
2010年の10月なので今年でちょうど10年になります。
その前は、北欧家具を中心に輸入家具販売をする「エイペックス」というお店で家具の修理をしつつ、家具修理や家具構造の基礎を学んでいました。そのあとは内装大工として職人を経験しました。大工の仕事を学んだことで「やはり家具の職人になりたい」と思い、家具職人として独立しました。
ーー家具の修理は難しいと思うのですが、木工訓練校にも行かれたのでしょうか?
武蔵野美術大学工芸工業デザイン科を卒業していますが、当時は金属の加工をしていました。大学の木工科や木工訓練校には行っていません。だから僕が実際に家具に触れたのは家具屋が初めてです。そこでいろいろと学ばせていただきました。おそらく、そういう家具職人はイレギュラーだと思います。
ーー現在も木工だけではなく金属加工もされているのですか?
はい。例えばオーダー次第でテーブルの脚にアイアンを組んで作ることもします。
壁一面にシェルフを作ったこともありますね。
ーー家具修理と大工を経て、ご自身で勉強されたのですね。
木工の成り立ちや仕事は大工をしている時におおよそ把握できました。ただ、現場でカンナやノミを使うことがほとんどなく、無垢家具を作る知識はなかったんです。
その部分は木工家さんの教室で基礎を学びました。
ーー基礎とはどういったことですか?
カンナ、ノミの研ぎ方、ホゾの作り方など本当に木工の基礎です。
その教室以外は本から学びました。海外で出版されている本、日本で出版されている本とありとあらゆる本を読んで勉強しました。
ーー独学で職人になられたのはすごいですね。
もともと、家具にかかわる仕事をされたかったのですか?
そうです。北欧家具屋さんで働いている時から常に気持ちはありました。
家具屋さんを辞めて大工になった際も「家具・建具製作」と書いてあったので、家具について学べると思ったんです。蓋を開けてみると大工仕事だけでしたが。
でも「せっかくなら大工として働いているからこそ学べることは学ぼう」と決めました。
工房を立ち上げてからのこと、そしてヴィンテージ家具販売
ーースタートはとても大変だったと思います。軌道に乗ったタイミングやきっかけはありましたか?
「軌道に乗った」という感覚は正直ありません。じわじわと仕事が入るような感じです。
ただ、工房を立ち上げた瞬間に「仕事になる」とは思いました。
すべて自作でホームページを作ってリリースしたらご依頼いただくようになり、それがきっかけで仕事として成立するという実感を持ちました。
ーー独立してからの仕事は主に家具などのリペアだったのですか?
初めの頃は完全にリペアですね。
当時は北欧や日本の古い家具や小道具を仕入れて販売していたので、それもあってリペアの需要もありました。
ーー木工工房のほか、家具の仕入販売もされていたのですね。
以前に働かれていたエイペックスさんでの経験も生かされていますね。
そうです。家具屋さんで働いていた時は、僕自身が買い付けに行くこともありました。
独立してからは知り合いの業者の方に協力してもらっていました。
現在は以前に比べ買い付けの量が少なくなったので、ヴィンテージ家具の販売は縮小しています。
僕が始める10年前くらいから、どんどん北欧家具やアンティークのアイテムが品薄になってきていますので。
ーー山田さんは他の職人さんとは違う筋道で職人になられたと思いますが、職人になってから辛いと思うことはありましたか?
やっぱり仕事がない時が一番辛いですね。
ホームページから注文やお問い合わせをいただくことが集客のメインなので、ホームページは何もわからないところから必死で作りました。
ーー独立前に家具メーカーで働くという選択肢はなかったのですか?
木工家具づくりの職を求めて就職活動をしたこともあります。決して間口が広い業界ではないので難しかったですね。
でも独立することに対しての不安はありませんでした。大工をしていたこともあり、細かい基礎的な部分は、原理さえわかってしまえば「できる」と思ったんです。
山田さんの考える理想の家具、尊敬する家具職人とは
ーーいろいろなことを経験されている山田さんだからこそ、今があるんですね。
山田さんの考える「家具の理想」はありますか?
僕の理想は、細部までこだわってデザインした家具を値段を考えずに売ることです。
「この価格帯じゃないと売れない」とか考えて作りたくないんです。
どうせ作るなら、すべて自分の理想とする形、デザインにして、すごく手間をかけた椅子や家具を満足できるように作りたいですね。
例えば、以前作った椅子は、すべてブラックウォールナットの無垢材です。
ーーこだわりを持つ職人さんに製作をお願いできるのはオーダー家具ならではですね。
山田さんが家具を好きになったルーツを教えていただけますか?
僕のルーツは、完全に北欧家具です。その中でも椅子が好きで、自宅にも結構あります。イルマリ・タピオヴァーラやウェグナーも好きです。
綺麗な形が好きなので、好みに統一性があるわけではなく、日本の家具も好きですね。
とても好きな作り手さんもいます。
アメリカ出身のSam Maloof(サンマルーフ)という木工作家さんで、一番好きですね。
この写真はサンマルーフが作るチェアの継手(つぎて)を参考に作った作品です。
※継手(つぎて)とは、家具や建具を作る際に、木と木を刻み加工して接合することを言います。
ーーとても綺麗なフォルム、ラインですね。サンマルーフさんのどういったところが好きですか?
作り方がすごく彫刻的な、家具のフォルムが好きです。
すべてが繋がっているような作りなのです。
木工製作は引き算が多いのですが、サンマルフさんは「足してから引いていく」というイメージ。普通なら切断して削るところを、一度大きな塊をくっつけてから削っていく感じです。
接合も複雑な形をしていて、それも含めてとても魅力的なんです。
依頼がきたら断らない、山田さんのこだわり
ーー素敵な作り手さんですね。作り手の思いはデザインにもつながっていますね。
山田さんが今まで修理したり制作したりした中で思い出に残る作品はありますか?
ショーケースですね。2メートルを超える店舗什器を2台作ったんです。
その時は完全にオーバーワークで、何日も徹夜するのがあたり前になっていました。
注意力散漫な状態で機械を使うのは本当によくありません。ショーケースを落としかけて大怪我をしてしまいました。それ以来、オーバーワークにはならないようにしています。
あそこまで大きなものを作ることも少ないし、怪我をしてしまうしで、いろいろな意味で思い出に残っています。
ーー怪我をしてしまったら本末転倒ですものね。
本当にそうなんです。僕が怪我してしまうとすべてが止まってしまうので、それだけは避けないといけませんから。今はオーバーワークをせずとも、ちゃんと納得のいくものをお客様に提供できるようにしています。
ーーショーケースは特殊な依頼だと思うのですが、いろいろな依頼がくるのですね。
「依頼がきたら断らない」ことが、いろいろな依頼がくる大きな理由かもしれません。
作ったことがないものだと興味が湧いて、作りたいと思うんです。
ーー今までに作ったことがないモノを「作ろう」と思って形にできるなんて……
やってみると意外とできるものです。今までいろいろと見てきた経験が作品に生かされていますね。実際に依頼を受けてみて「結構大変かも」と思うこともありますが、お客様に提供できる作品は作れます。北欧テイストの家具は好きなので、特に得意分野です。
ーー私も北欧家具はとても好きです。
北欧家具に詳しい山田さんに相談できるのはとても安心感がありますね。
僕の好きなジャンルなのでぜひご相談いただけたらと思います。
現在は個人のお客様がメインですが、今後は法人のお客様も増やしながら、工房の法人化も視野に入れています。一人では好きなことをする時間が足りませんし、オーバーワークは自分のためにもお客様のためにもなりませんから。
読者の方へ、山田さんから一言
ーーありがとうございます。最後に読者の方に一言お願いします。
僕はお客様の希望をすべて叶えたいと思っています。「こういう形で作って欲しい」「このサイズのこれが欲しい」など、なんでもご相談ください。気軽にお話しいただくだけでもかまいません。素材からしっかりとご提案いたします。
ヴィンテージ家具をたくさん扱ってきましたので、修理でもお客様の力になれます。
オーダーだけでなくヴィンテージのリペアもご相談いただけたら嬉しいです。
山田さんありがとうございました!!
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