職人体験記

1872年創業神戸洋家具を代表する老舗家具ブランド「永田良介商店 R.nagata」

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「永田良介商店 R.nagata」店舗訪問記

神戸の地に歴史を刻む老舗洋家具店「永田良介商店」
旧乾邸や旧ジェームス邸、ヨドコウ迎賓館など神戸を代表する歴史的建築物の内装を手掛ける、神戸洋家具を代表する存在です。
148年の歴史に新たなページを刻む店舗リニューアルにかけた想いなど、6代目店主永田泰資さんにお話をお伺いしました。

永田良介商店と神戸居留地の歩み

――こちらのお店はいつから始められたのでしょうか?

1872年、明治5年から創業しています。
神戸大丸までが居留地なので、ちょうど境目にあたる場所に店舗があります。

もともと居留地は外国人しか住んではいけない外国人専用のエリアなんですよ。
だからこのエリアは、もともと外国人向けの商売をしているお店がすごく多かったんです。
そこで舶来品などが多く入ってきて、そういうものをだんだん日本人も買い求めるようになってきて、栄えてきたという歴史があります。

この界隈は神戸港が開港した当初に「この場所で新しい商売が盛り上がるんじゃないか」と野心を持った人達が集まって来たところで、そこからだんだん神戸の中心地になっていきました。神戸居留地の文化なんですよ。

神戸洋家具の魅力〜家具産地 神戸に求められていること

――神戸洋家具の魅力を教えてください。

今までもいろいろな人に「神戸洋家具って何?」とよく聞かれます。
神戸洋家具が他の家具とちょっと違うところは、日本国内の洋家具文化として一番古い歴史を持ちながら、どの時代でも変わらずオーダーメイドでの製作をし続けてきたことです。

日本の洋家具文化として定着しているのは神戸と横浜なのですが、もともと海外から入ってきた物を修理したことから始まって、製造する技術を身に付けていったという背景があります。
更に神戸と横浜が発展していった要因は、消費地が周りにあったことが考えられます。大阪や東京という大都市が近くにあるのです。神戸の場合は「阪神間モダニズム」といって神戸から大阪・西宮にかけて、六甲の山の手辺りに大邸宅が立ち並んでいました。

――「阪神間モダニズム」とはどのようなものですか?

阪神間モダニズムとは、阪神間を中心とする地域に育まれた、近代的な芸術・文化・生活様式を指す言葉です。
多くの財界人文化人が神戸から大阪にかけてのエリアに住居を構え、時代の最先端を取り入れながら洗練されたお洒落な生活を謳歌していた時代がありました。

特に有名なのは「住吉村」というエリアで、富裕層の方たちがとんでもない家を建てていたといわれているところです。
外国人からの修理依頼に始まり、注文受けた家具を作っていた職人さんが、今度は日本人のお金持ちから依頼を受けて、その家の為だけの家具を作るようになりました。
それが、技術そして商売として残っていき、神戸家具の特徴となったのです。

ーー家具だけに収まらず建物内装全般を製作できる技術もあったのですか?

そうですね。建物の内装はもちろん造船もそうです。神戸には三菱などの造船工場があって船舶内装などを過去にたくさんやってきています。
明治以降ずっとオーダーメイド品を作り続けてきました。その後日本全国で婚礼家具が大流行し、神戸もたくさんのオーダー婚礼家具で溢れました。バブル崩壊で大変な時期を経て、近年では家具業界も大量生産大量消費の時代になりましたが、それでも変わらずにずっとオーダーメイドの家具を作ってきた。
お客様のこだわりに応え続けてきたのが神戸洋家具の歴史です。

身近なところに裕福な消費地があり、今もなお文化を継承している点が神戸洋家具の特徴かなと思います。他の生産地と比べるとひとつひとつの工場は小さいですが、工房の特殊性が高い強みもあります。
オーダーメイドで毎回違うデザインの家具を製作するので、技術力の高さが強みです。
ただし大量生産の需要にはまったく向いていません。

――いまの時代に家具産地である神戸に求められるものとは。

ひとつのものをこだわって作ることに対しては、他の産地にはない技術をしっかり持っていて、きちんとした物を仕上げていくことができます。昔からの技術をしっかりと継承できていることも特徴です。
ここまで説明して、やっと「神戸洋家具とは?」を説明できます。

世界のハイブランドファブリックとの出会い

――次はオーダーのファブリック生地について。
永田良介商店さんのファブリックはおしゃれなものが多いですね。

もともと値段のはる家具を販売していますので、生地も良い物をご提案したいと考えています。
昔はうちも国産の生地を使っていました。
しかし国内のファブリック業界はだんだんと機能性と売りやすさを重視するようになり、他と違うものはなかなか見つからず、個性を出せないなと思っていました。
「それではちょっと面白くないよね」と、生地の取り扱い数を増やしてみたんです。

――実際に現地に行き直接メーカーの視察をされるなどしたのですか?

フランスの生地屋さんに毎年定期的に行っています。ヨーロッパでは変わった生地ではなく、新しい物が発表されたら「それにする」というのが普通でした。とてもびっくりしたのが、高級なトップブランドの生地もホームセンターに売っているんですよ。

――インテリアを楽しむ習慣が生活の中にあって、私たちとは全く感覚が違う。まるで別世界ですね。

パリのデパートに入っているホームセンターの中で普通に見本帳がたくさん展示されていて「どれを選ぶか」みたいな感じです。皆、普通に見て回って「これにしようかな」というテンションで生地や壁紙を選んでいるんですよね。

海外の人達は家具本体を何年も使えるものだと思って買っているので、「痛んだら張り替えたらいい」という考えなんですね。日本の家具の考え方と違います。

――そうかもしれません。日本は特に家具に対する優先順位や購買頻度は世界の先進国の中でも低く感じますね。

「もうボロボロになってきたから捨てて、新しい家具に買い替えようかな」というのが日本の感覚です。

ファブリックの部分もきちんとヨーロッパの文化を取り入れて、素敵な物をきちんと提案していこうというのが、今の僕たちの考えている椅子や家具の提案の仕方です。

――デザインやサイズそれに生地をたくさん選べるとなるとお客様は悩みませんか?

皆さんかなり悩みますよ。
でも、やっぱり世界でひとつの個性的な家具を作れるというのは大きいですよね。
生地まで含めて、サイズや形など、その人のための椅子を作っていく感覚でやっています。昔に作った物であっても、生地を張り替えたら全然違う物になって気分も変わってくるので、そういうことが喜んでもらえる要因になっているのかなと思います。

店舗にはサンプルの大判生地やストック在庫もあるので、実際に家具に合わせてみてイメージしやすい環境も整えています。
そういった会話のコミュニケーションも含めて、オーダーメイドの楽しみ方というか醍醐味だと思います。

――現在作成中のオーダーシステムがあると聞いたのですが、システムの概要を教えてください。

視覚的に「もっとオーダーを分かりやすく」ということをコンセプトに、ソファーのパターンオーダーのシステムを作ろうと計画中です。
ただ単にパターンオーダーをするのは面白くないので、生地を70種類くらい用意してCGを作成し、画面上でイメージしやすいようにしました。シュミレーションして生地を変えると、ちゃんと画面上の家具が変わっていくような。サイズや生地を選んでいただいて一緒に家具を作っていくようなシステムを設計中です。

国産洋家具業界はブルーオーシャン?時代を読むストーリー戦略

――先代から数えて6代目になる永田泰資さん。ご自身の代に変わって何か意欲的に取り組んだこと、チャレンジしたことがあればお聞かせください。

期待を持って見にきてくださるお客様に応えたくて、2020年に店舗の全面改装を決めました。
また皆さんに知ってもらう機会をどのように増やしていけるかを考えました。
そのためには、「街の家具屋さん」からブランドに変貌しないといけないと思っています。
よりきちんと情報を整理して発信できるように、カタログやホームページの改修に着手しました。

一番大切なことはファンを大切にすること。
どれだけSNSやYouTubeが流行ったとしても、今の世の中で永田良介商店の家具を使ってくださっている人の評価が一番信用できると思っています。

148年の歴史を一新。リニューアルに込められた想い

――11月にリニューアルオープンおめでとうございます。
リニューアルのコンセプトやテーマをお聞かせください。

まずは、お店に来た人にどれだけ「永田良介商店の世界観を感じてもらえるか」というところが一番大きいポイントだと思っています。

具体的には、一階に手織りのギャッベやオリジナルスリッパ、神戸レザーを使用した革小物を展示していて入店しやすい雰囲気を醸成。
永田良介商店の感性でセレクトしたインテリアアイテムを揃えています。

二階には、家具を「ラグジュアリー」と「カジュアル」のふたつの演出でシーンごとに展示しています。シーンごとに床を変えるなどもこだわっています。壁面の造作家具もオーダー対応できるのでぜひチェックして欲しいですね。

三階にはアンティーク商品を。途中の階段にはミュージアムのように神戸洋家具の歴史を感じる仕掛けを施してみました。

――「神戸タータン」や「神戸レザー」とコラボされているんですね。神戸ならではの商品ですね。

やっぱり神戸家具を売る一番の市場は神戸なんですよ。
神戸の家具がすごいということを全国に届けるより、まずは地元の人に「神戸の家具は良いねんで」と思ってもらうのが一番大事。それは家具業界の力だけではなくて、神戸にある物を神戸の誇りに思うことが重要です。

神戸の人は本当に神戸が好きなんですよ。

ーー店内内装も細かいところまでこだわっていることを感じます。

お客様に「さすが、永田さんセンスがあるね」と言われたのは単純に嬉しかったですね。
あとは、お客様が歴史のパネルを見て「ここも永田さんがやってるんだ」と、新しい発見があったようなんです。実はうちが過去に収めた雲仙観光ホテルの写真を見て、新婚旅行に行った思い出が蘇ったそうです。家具やインテリアは思い出の中でも生き続けるものなんだなと感じました。

――また来たい。紹介したい。と思ってもらえるのは嬉しいですよね。

それはとても大事なことです。
家具を探されている方が、お店に来た初日に買うことはかなり少ないです。ですから「もう一度来よう」と思っていただくことがとても大事なポイントだと思っています。
ですので、一階は常に新しい仕掛けをしていきたいと思っています。商品のラインナップやペルシャ絨毯展など、来るたびに変化があるお店にしていきたいです。

――新しくなった永田良介商店が目指していく方向性が楽しみです。
  

神戸洋家具の未来に向けて

――これまで数回にわたり神戸洋家具の各工房を取材させていただきました。
神戸洋家具の未来について、永田さんはどのようにお考えですか?

今以上にもっと付加価値を上げていくしかないと思います。
家具産地神戸には他の家具産地には無いオーダーメイドへの提案力と対応力、そして実際にそれを取り組んで来た歴史があります。
例えば高度な技術が必要なクラシックで重厚な内装であっても、緻密な彫刻であっても、神戸洋家具なら対応することができます。

おそらく内装やリフォームなど建築分野の仕事は今後も変わらず需要があると思います。
どんな時代でもお金をかけて内装するところはきちんとした什器を求めているし、自分たちのオーダーでほしいものを作ってほしいという方向にいくと思います。
そういう需要にきちんと応えられるようであれば、神戸洋家具の歴史は変わらずに継承されていきます。

神戸洋家具のメーカーとしての永田良介商店の今後は、どんどん新しいデザインを取り入れるとか今までになかったものに注力していくのではなく、今までと同じものを同じクオリティで作れる技術を残していくことの方が大事だと思っています。
永田良介商店がこれだけ長い間続いてきた一番大きな理由は、先代たちが家具の修理を疎かにしなかったことだと思います。初代の商売が修理から始まっていて、ヨーロッパの思想を背景にして作っている家具だからこそお客様の家具が古くなって痛んで来ても「新しいものを買いましょう」ではなくて「修理しましょう」と提案してきました。

これはつまり、いつ来ても前と同じものを作ることができるし、何十年前に買ったものでも修理できる技術力があってこそだと。その技術を今後も残していくことが、一番大事だと思っています。
そして、そういう本物の家具を探している人や欲しいと思っている人も世の中にはたくさんいるはずです。そういう人にまだまだアピールが足りず上手く届いていないだけだと思って、軸はブラさずに時代を超えていける価値あるものを届けていきたい、届ける努力を突き詰めて行きたいと思っています。

神戸洋家具の未来を見据え挑戦を続ける永田良介商店6代目店主 永田泰資さん。貴重なお話をありがとうございました。

SHOP NAME 永田良介商店
TEL 078-391-3737
ADDRESS 兵庫県神戸市中央区三宮町三丁目1番4号 永田良介商店ビル2F
ACCESS
各線三ノ宮駅より徒歩10分 / 各線元町駅より徒歩5分 / 地下鉄海岸線 旧居留地・大丸前より徒歩1分
永田良介商店ビル1F「quatre saisons 神戸」店内の階段から2Fへお進み下さい。
OPEN 11:00~18:00
CLOSE 毎週水曜日、第1・3・5火曜日
HOME PAGE 永田良介商店 公式HP

 

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