職人体験記

工房訪問!『WOODWORK』藤本さんにインタビュー!『古着の世界から家具職人へ』

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「WOODWORK」工房訪問記

今回はWOODWORKを訪問し、藤本さんにいろいろと聞いてきました。WOODWORKならではの雰囲気をご確認下さい!


 

工房はいつから始められたのでしょうか?

元々は、創業113年くらいの下甚(しもじん)商店という材木屋でした。材木屋は基本的に一般の方に材料を売りません。
それで、一般の方にも販売するために「WOODWORK」というお店を始めました。材木を売るための店舗と、地下に材料を切ったり加工したりする工房がありました。
当初は家具屋というよりもホームセンターみたいなお店でしたね。


 

材木屋から始められた工房なんですね。藤本さんは訓練校などで学ばれたのですか?

専門学校にも行きました。でも元々は高校卒業後、古着屋で働いていました。
その当時、古着も家具もミッドセンチュリーが流行っていて、古着屋でミッドセンチュリーの家具も仕入れていたんです。

 

古着屋でヴィンテージ家具も扱っていたのですね。

そうなんです。それで家具のデザインを知って「こういう世界があるんだな」と思いました。家具をデザインするためにはどうしたらいいかを考えて、木工専門学校に通うようになったんです。


 

デザインをきっかけに古着から家具の世界に入ったのですね。

最初は古着屋をやりたかったんですよ。店頭販売や値付け、倉庫作業などをしていましたが、古着の仕事をするうちに家具に惹かれていきました。「自分の思ったものを形にできるってすごく面白いな」と思ったんですよね。元々デザインや建築が興味があったこともあり、木工の学校に行くことを決めました。
 

そこから「WOODWORK」で働くことを決めた理由を教えていただけますか?

学生時代にずっと買い物に来ていたことも1つの理由です。学校の課題で実際にモノを作る授業があり、その時に使う材料を買いに来ていたのがWOODWORKです。
そして「ここでなら自分が思っているモノ作りができるんじゃないか」と思えました。
いちから自分でお店をすることも考えましたが、こういう環境があるなら可能性があると思い、働かせてもらうことになりました。


 

働き始めは材木屋としての仕事もこなしながら家具作りをされていたのですか?

そうですね。材木屋も兼ねているので材料を運んだり舞台セットの垂木を運んだりもしていましたね。歌舞伎座との付き合いもあったので。
家具に関しては、オリジナルもありましたが、お客さまのご要望に応える、オーダーというかDIYの延長みたいなのが最初のきっかけでしたね。

 

ショップで働き始めてから、オーダー家具を作ってほしいと言われたことがきっかけなのですね。

そうなんです。最初は、デザインに対してあまり理解がありませんでした。ですから身近ではない家具、例えば、初めに興味を持ったミッドセンチュリーの家具やアートのような家具はどうしてあるのかという疑問をずっと持っていました。いろいろと知るうちに家具の世界はデザインからできていることを知り、家具をデザインしていくことに没頭しました。
だから作ることよりもデザインが先にきているんです。

建築や空間にも興味がありましたが、「自分が作れる規模」があり、僕はそこまで大きな物ではないなと思って。建築や空間よりも、そこに入る作品をデザインするところに特化しました。


 

その過程の中で、苦労されたことがあれば教えていただけますか?

僕は職人出身ではないので技術面ではやはり悩みましたね。
大工さんや木工職人さんなど、技術一筋でやっている人達の中で、大変な部分はありました。でも一番大変だったのは、デザインと作ることの両立でした。

 

それは構造や強度のことですか?

そうですね。それに作りやすいデザインのものに逃げてしまったり、デザインはしますが実際に作らなかったりしたものもありました。デザインはできますが、形にするのは、また全然違う話です。結局中途半端になってしまうこともあり、デザインと作ることのバランスを取るのが最初は大変でした。
 

その苦労はどうやって乗り越えられたのですか?

四の五の言わずやるしかないって感じですかね。
僕が働き始めて5年くらいして、「WOODWORKを家具屋としてやりましょう」「ブランドにしましょう」と今の形にリニューアルしました。でも、その時に売るものが何もなかったんですよ。家具屋として始まるのに。もう作るしかないんですよね。

いろいろな形をデザインして、作って、クオリティーを上げて、ラインナップを増やして……というところからのスタートだったので本当に苦労しました。


 

それで乗り越えられたのはすごいことだと思います。

だからラインナップが多いブランドさんは本当にすごいと思います。
歴史もあって常に新作を出しているとか。
きちんとデザインを考えて、それを作品としてお客さまに見せることができるのは本当に素晴らしいなと思いますね。

 

それは藤本さんもだと思います。
今までさまざまなモノづくりをしてきた中で、WOODWORKのこだわっていることがあれば教えていただけますか?

今のWOODWORKの家具はオーダーが強いんです。ショールームの下に工房があり職人と話せる環境になっていますので、オリジナリティの高い家具が生まれます。
オーダーは、ある程度フォーマットが決まっていて、その中で作る流れが多いのですが、当店は職人と身近に話せるのでフォーマットから外れたデザインを作ることもできます。

ショールームと工房が近くにあることで職人さんが身近になり、お客さまのイメージを形にしやすい環境なのですね。

現実的に生活のしやすさを求める方、逆にデザインに特化したい方など、お客さまもいろいろな方がいらっしゃいます。さまざまなジャンルがある中で、その方のライフスタイルに合わせた家具を職人と一緒に作れる今の環境は、お客さまとの距離感という意味でもとても重要ですね。

 

ありがとうございます。それではオススメの作品を教えていただけますか?

こちらのテーブルです。


 

これは無垢材とステンレスを合わせたテーブルです。
四方だけが金属で、あとは全部木部でつないでいるデザイン。木部でサイズ調整ができるようになっています。


 

なるほど!オーダーで自由にサイズ変更できるのですね。

そうです。例えば、これは無垢ですが合板でも制作可能です。
家具は決して安いものではありません。一人暮らしや二人暮らしのときは小さめのテーブルで合板のものを使うことも多いと思います。
結婚したり家族が増えたりしたタイミングで無垢材の大きめのテーブルにしようと思ったとき、新たに作り直して調整できるようにデザインしたテーブルなんです。


 

生活環境により可変性のあるテーブルはいいですね。
シルバーフレームのデザインもすごく新鮮です!

これはステンレスですが、スチールで溶接の後をわざと残して素材感を出す加工もできます。
 

具体的にどの程度のオーダーが可能ですか?

ステンレス部分の素材変更や足も変更できます。
相談次第でお客さまのご希望にあったカラーに塗装することもできます。
カラーサンプルは果てしなくありますからね。
できない部分がゼロではありませんが、限りなくご要望通りに近づけること可能かと。
たまに、お客さまご自身で天板の色を塗りたいという方も。
その時は仕上げでお渡しすることもありますし、ここで塗っていかれる方もいます。

 

オーダー家具はそこまで自由度が高いものなんですね!!

確かに自由度は高いと思います。
塗装場があるのでお好きな色に塗っていただけます。
素材も基本は無垢材ですが、予算の都合上どうしても難しい場合は予算に合わせたものをご提案できます。合板にすることも可能です。
お客さまとの話の流れや距離感にもよりますが、できるだけお客さまのご希望に近いものを作れるようにしています。「イメージを伝える」ことはお互いにとても難しいことなので、コミュニケーションは非常に大事な要素ですね。


 

材木屋さんだったことで木の仕入れもよく、選別できて提案もしやすいのですよね。

それはありますね。材木販売の流れと家具の材木とではまた違う部分はありますが、必要な材木の選別という部分は勉強になっています。
 

店奥に一枚板が並んでいますが、材木販売をしていたからこそできる販売方法ですか?

一枚板は、そうですね。取り扱う所は以前に比べて増えたと思います。一枚板はとても価値があるものとしてお客さまに認識されていると思います。


 

一枚板といえばやはりテーブルでしょうか?

WOODWORKでは丸太で仕入れて、その時の価格帯で売り方を考えて提案しています。材木は付加価値がついて高くなるものが結構あります。
特に一枚板は、大きさや貴重材かどうかなどの要素で価格がつきます。そこをあえて省いて、自分たちが家具としてどう作っていくか、木そのものをしっかり素材として見ていこうと思い作成し販売しています。


 

すごいですね。一枚板を選定する技やコツみたいなものはあるのですか?

加工しやすさ、状態の良さ、少し割れや節があってもそれが魅力的かどうかなどを一枚一枚見ていきます。
あとは接ぎ合わせですね。一枚でなく三枚で映える時に、どういう風に接げばナチュラルに見えるかなどを指示して形にしていきます。


 

藤本さんのオススメの合わせ方などもあるのですか?

合わせ方とは違いますが、これから取り入れていこうとしているのが、節があったり割れがあったりして普通なら使えない材木を個性としてインテリア家具にデザインしていくことです。
例えば、こういう虫が喰ってしまって普通なら使わない材木ですね。


 

お話を聞くと節も虫食いも個性と感じられますが、知らなければ個性とは思わないかもしれません。

日本は節や割れを使わないモノづくりの流れがあり、きれいなところだけを家具にしてきています。逆に海外ではその個性ある素材を上手に使うことが主流で、節があることがかっこいいというスタイルなんです。 WOODWORKでも海外スタイルでの家具を作っていきたいと思っています。それで、節や虫食いのある素材をどういうアイテムとして使っていこうか、どのようにして小物だけでなく大きい物でも作っていこうかと考えています。
 

これからどのようにしていきたいなどの展望はありますか?

今まではきれいな板を作ることが多かったのですが、これからはその組み合わせを考えていきたいです。癖のある材の接ぎ方やつなぎ方を考え、それを使うことで魅力的な家具ができると考えています。節や割れなどの個性があるものを使った作品づくりをしたいと思います。


 

ありがとうございます。
次に工房をご紹介いただけますか?

それでは、工房で家具製作の工程を簡単に紹介していきますね。
まずはこのパネルソーという機械を使って大きい荒木の形を整えていきます。
そこから縦横と必要な部材に切って加工の工程に入ります。


 

荒くとった部材を、プレーナーと呼ばれる電動のカンナのような機械で厚みや幅を調整していきます。


 

木は基本的に反っている物なんですが、反ったままの状態で製材すると反った状態の材になってしまいます。反りも取って真っ直ぐな板を作っていきます。
次にサイズを決めて幅をカットしていく工程になります。

 

カットする機械もたくさんあるのですね。

そうですね。これは主に縦に割いていく機械。


 

それでこっちは横ですね。


 

木目には縦挽と横挽があり、それに応じて機械や刃を替えて加工していきます。
今のは角材を作る工程でしたが、今度はこの板材を見ていただきたいです。
これはオーダーいただいている棚を作るためのパーツになります。


 

このパーツを作るのも先ほどの角材を作る工程と一緒で、同じ流れで製材されていきます。


 

ひとつの作品は本当にたくさんの工程を経て完成していくんですね。

家具はパーツがひとつでもずれてしまうとバランスが悪くなってしまうので、全ての工程がとても重要です。
次にホゾ穴の作り方を説明していきますね。

 

よろしくお願いします。

これは椅子のパーツで、この四角いホゾ穴は角ノミ盤と呼ばれる機械で彫っていきます。


 

この穴が雌と呼ばれます。次に雄と呼ばれる、雌にはまる部材を作っていきます。
雄と雌ができるとこうやってはめ込むことができるようになりますね。


 

簡単に見えますが、実際はとても繊細な作業ですよね。

ひとつひとつがとても重要な作業です。
次はこういう溝を切ったりする、ルーターと呼ばれる機械を使って作業していきます。


 

刃がたくさんあり、形状によっていろいろ用途が違うんです。この刃の部分が回転して削っていきます。


 

角度や刃物のアールによってさまざまなサイズに加工することができます。


 

こうやって椅子が完成するんですね。製作上のこだわりを教えていただけますか?

作り手の一人が全てを担当して最後まで作るというところでしょうか。
分担する工程もありますが、メインの工房長がいて、職人二人のそれぞれがひとつの家具を担当して作り上げていきます。
しっかり技術を持った職人たちがいて、一人がいちから作っていくのがWOODWORKの特色ですね。


 

ありがとうございます。最後にコラムの読者に一言よろしいでしょうか?

「ほしい」という思いを職人に伝えてもらいたいです。
オーダー家具は敷居を高く感じる人も多いはず。でも、「ほしい」と思ったら、相談だけでもいいので、ぜひお話ししてみてほしいです。職人だからこそご要望に応えられることも。ご予算についても一緒にお話しすることで、形できることがたくさんあります。コミュニケーションを大切にするなかで、お客さまにとっての付加価値が生まれてくると思います。
その付加価値がオーダーを楽しいものにしますし、僕らが家具を作るモチベーションにもなります。


 

藤本さんありがとうございました!

 

WOODWORK
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Writer Profile


Takuto Suzuki
Inte-code.inc所属のインテリアコーディネーター。1991年静岡県生まれ。北欧インテリアショップの販売職を経て、inte-codeで空間のコーディネートを行う。その経験をもとにインテリアショップ体験記の運営、取材を担当。

 


Yoshiaki Ogiwara
インテリアショップ体験記のカメラマン、編集、取材を担当。
アパレル業界で10年働いた後、現在インテリアの勉強をしながら独立に向けて日々精進中。

 

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