職人体験記

工房訪問!『Fremont(フリーモント)』柳さんにインタビュー!『生活から生まれる形、シェーカー家具』

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「Fremont」工房訪問記

今回はFremontを訪問し、柳さんにいろいろと聞いてきました。Fremontならではの雰囲気をご確認下さい!


 

柳さんはいつこの工房を作られたのですか?

独立してこの工房を構えたのが2014年です。もうすぐ6年になります。


 

いい場所にある工房ですよね。ご出身もお近くですか?

僕の出身は神奈川県相模原市で、ここは町田市です。独立する際、地元周辺でも場所を探しましたが、たまたまこの工房が空いたのでこちらに決めました。
 

内装にもこだわりがあり素敵ですね。イチから柳さんが作られたのですか?

ここは以前、印刷所でした。ところどころに名残が残っているんですよ。工房スペースにある作業台は印刷所の作業台をそのまま引き継いでいます。


※工房スペース
 

この作業テーブル、雰囲気が素敵ですね!

僕も気に入っているんです。ギャラリーと分けるために壁を建てて扉をつくり、一部にはペンキを塗りましたが、作業台がある工房スペースはほぼそのまま残しています。


※工房スペース
 

柳さんは小さい頃から手作りがお好きで、オーダー家具制作を始められたのですか?

手作りというか、絵を描いたりなにかを作ったりするのは好きでしたね。でも、高校卒業後、最初は服飾の専門学校に行きました。


 

そうなんですね!「木工」とは全くジャンルが違いますね。

全然違いますね。服飾専門学校に2年間通いましたが、結局、その業界にあまり魅力を感じなくなってしまったんです。
 

専門学校に通っている時に、服に興味がなくなっていったのですか?

服は好きですが、「服飾業界」に対してあまり魅力を感じなくて。服飾業界に入るのを辞めてしまいました。
洋服だけではないですが、流行に流されるというか、毎年入れ替わっていく業界の流れに僕はあまりピンとこなくて。
それで、その後はテレビ業界でセットを作る裏方の仕事に就きました。


 

そうなんですね。それは空間プロデュースするようなお仕事ですか?

いや、本当にテレビのセットを作るスタッフですね。そこで2年くらい働きました。
でも、テレビのセットも、建てて壊しての繰り返しがしっくり来なかったんです。
仕事というより、「サイクル」的なところにピンと来ませんでした。
でも、そのセットを作る仕事を通して大工さんや作ることに興味を持ち、「もう少し本格的に手に職をつけたい」「技術を学びたい」と思うようになりました。

 

いろいろなご経験から、家具職人になると決められた理由はなんでしょうか?

大工さんは、大勢でひとつの家を建てますよね。でも家具職人はひとりで全部作れる。
そこに家具を作る魅力を感じました。
最初から最後まで自分一人で完成させられるものがいいなと思ったんですよね。


 

ひとりで全て作るロマンは、僕も感じます。
職人になろうと決めてからはどこで学ばれたのでしょうか?

職業訓練校に1年間通いました。その後、3カ所、家具を作る木工所で働きました。
 

木工所で学び、「独立できる」と思ったのはどういうタイミングでしたか?

最初から「独立して一人でやりたい」という思いがありました。だから「ここの木工所ではこういう技術を学べるな」と考えて働いてました。「ここで2年学んだら、次はこういう所にいこう」という感じです。
技術的なものは、年数や経験を重ねれば誰でもある程度は作れるようなります。
あとは自分の中で期限を決めていたので、そのタイミングで独立しました。

 

期限決めて進めていくのは大事ですよね。
独立して職人になってから今までで、困ったり悩んだりしたのはどんな時ですか?

そうですね……正直、あまり困ったことはないかもしれないですね。
修行時代がハードだったので、それに比べると今は楽だなって思っちゃいますね。
しいていうなら、木工所は朝早くから夜遅くまでなので、そういう時間的なしんどさですかね。
 

一人でやっていくことに『孤独』を感じることはありませんか?

孤独はないですね。一人でやりたかったので。
たとえ困ったことがあっても、前向きに考えて前に進むしかないですから。
「前に進むためにどうすればいいか」としか考えないので、あまり困っていると感じないのかもしれません。


 

金銭面のご苦労などはありましたか?

そうですね。金銭的な悩みは常にありますね。僕はある程度、自分の特徴を活かせる仕事を選んでいますので。自分一人分をなんとかしている感じですね。
 

ありがとうございます。
それでは次に、柳さんの作品をご紹介していただけますか?

僕の作る家具のベースは「シェーカー家具」です。
「シェーカー家具」とは、キリスト教の流れをくみイギリスからアメリカに渡ってできた宗教を信仰するシェーカー教徒の暮らしの中で生まれた家具のことです。
シェーカー教徒達は基本的に自給自足で、慎ましい暮らしをしていました。

今はもうシェーカー教の活動はほとんどなくなってしまったんですけどね。


 

どのようなデザインの家具でしょうか?

なるべく装飾性を排除して、簡素な形をしています。
有名なのはシェーカーボックスなどです。

シンプルで機能的な家具は使いやすいものが多いですよね。

生活の中から生まれた家具なので、自然とそういう形になっていますね。
おおもとの家具自体は、宗教の流れでヨーロッパ家具から来ていると思いますが、そこからより装飾性を排除して、最低限の形にした家具です。

 

シェーカーの思想を元に家具作りをしようと思ったきっかけはなんですか?

自分の中の「暮らしを考えた家具」というイメージと、シェーカー教を知り共感した部分が重なり、作り始めました。
シェーカー家具も好きですが、その家具がある空間が好きなんですよね。
プラスアルファとして、現代日本に暮らす自分の生活、「暮らし」からでるものを足してデザインしています。


 

日本の生活と海外の生活は違いますよね!

海外の生活とは違う部分もありますし、日本ならではの暮らし方もあります。
シェーカー家具の要素をそのまま用いることはせず、日本との違いをうまくミックスさせるように意識しています。
僕の場合はオリジナリティをさほど求めていないので、あまり「作品」という感覚ではないです。でも、できるだけ簡素にして木の美しさを際立たせることは考えています。家具はその家具だけで完結するわけではないので。


 

家具を生活の一部として考えているということでしょうか?

そうですね。僕が一番大事にしているのは、「暮らしを考える」ということです。
作っているのは家具ですが、中心になるのは「暮らし」で、その中に家具や建物や衣食住がある感じです。
ですから家具に対して「このディテールにこだわって、こういう技術で作って」という感覚が僕にはあまりありません。

 

「暮らしを最優先に家具を作る」とき、どのようなことを考えて家具をデザインされるのですか?

僕はデザイナーという意識はなく、デザインを創造することはあまりありません。
職人ではありますが、「オリジナル作品を作る」という感覚ではないんですよね。
例えば、今、使ってるテーブルに特出するような特徴はないのですが、僕はこのテーブルをずっと作れればいいという考えを持っています。

毎年新作を考えるとか「次はこういうテーブルを作ってみよう」という感覚よりも、「もうこれをずっと作りたい」という、核みたいなものがあります。
 

シンプルなデザイン、使いやすいデザインのものに「暮らし」を足して考えていくということでしょうか?

主役は家具ではなく、食器やそこにのる料理、飾られるもの、そして家族の話や団欒のある「暮らし」が主役だと思うのです。
オーダーしてくださるお客さまの暮らしが第一で、家具はそれを支える道具であることが大事だと思っています。
だから物足りないと思う方もいると思うんですよね。
この小さいテーブルも、メインは天板に乗っているものや空間なんですよね。


 

例えばテーブルだと上に置くものがメインであるということですね。

そうですね。僕は草花が好きで、花を生けたりします。このテーブルは、それを生ける台がほしいと考えながら作りました。


 

逆転の発想ですね。

花を飾るのが好きで、そのための台がほしいと思って家具を作る。
結果的に、飾るのは花じゃなくても本でも何でもいいのですが、それらを置いてこれが完成します。テーブルだけでは完成していないのです。

それを計算されているからこそ、シンプルなのに生活を彩るのですね。

そうです。変に目立つと、それが主役になり邪魔をしてしまうのでできるだけシンプルに作っています。

 

なるほど。花瓶やアートを主役にして、それを引き立たせるための台。
だからこそ、両方あってようやく完成すると。

今、このテーブルにもコップがあり、本がある。そして話をしている空間があることで、できあがっています。
あの棚も、物をのせて好きなものを飾って、今この空間にあることで完成している。
きっと、あの棚だけだと物足りない感覚になるんですよ。
「これを作りました!」といっても、「あれ?なんか足りないな」って。
だから、生活や空間が大事で、そこから考えることが多いです。


 

見た目がシンプルなので、細部のデザインにこだわりがあるのかと思っていました。

むしろデザインをしないようにこだわってます。暮らしがあくまでも主役ですから。
ほとんどが自分の好きなものや暮らしからインスピレーションがきています。
ただそれを全て家具に反映させるのではなく、「組み合わせてできるものだ」と考えながら制作します。

 

暮らしから考えてくれるのは、オーダーする側も嬉しいですね。

そう思っていただけたら嬉しいですし、そういう所に答えていきたいですね。
だから大切にしているのはデザインではなく、お客さまとの「感覚の共有」です。

「どのような家具でどのような生活をしたいのか」を共有をして、シンプルに削ぎ落していくんですね。

僕自身の間口は狭いんです。
世の中には、たくさんの家具屋さんやメーカー、ショップがあって、デザインが素晴らしいものや一点ものなど、家具にもさまざまな種類があります。
そういった場所で競争することは考えていません。できるだけひとつのジャンルに入り込まないようにしています。

そして僕自身、デザインされているものが苦手ということもありますね。


 

それはどういう理由なのでしょうか?

物や空間に対しての余白が欲しいんです。テーブルの余白は天板であるように。
余白がいろいろなところにあった方がいいんですよね。自分が作るものもそれに気をつけています。

だから、デザインして生まれた物より、その国、土地の暮らしの中で生まれたものの方がいいと感じています。
例えば、焼きものなら信楽焼きなどがありますが、あれはその土地で人の暮らしから生まれたもので、誰かが考えて作りあげたものではない。
作家性があまりない方が、僕は好きですね。

 

歴史あるもののに惹かれるということですか?

それも当然ありますが、背景が全然見えなくてもいい時もあります。
古い物を選ぶ時、僕はその時代背景や昔の有名な人が作ったという価値には全く興味がありません。「その時間」を感じられる雰囲気が好きなんです。
食器でも、なんでもないシンプルな白い皿に使いこんだシミがあることなどに価値を感じます。

だから僕が作る家具は、できた時が一番いい状態ではなく、人の暮らしが重なった時にどんどんいい家具になっていきます。
家具と使う人の時間を共有することに価値観を置いてますから。

 

時間が刻んだ物の姿と背景に価値を感じるんですね。

そういった物は、えもいわれぬ何かをまとっていると思っています。
たたずまいが違うというか。そのようなものは、たたずまいが非常に魅力的です。

 

確かにそうですね。そのような魅力はよくわかります。

感覚的なものですけどね。
話がそれるかもしれませんが、僕は基本的に「自然が作り出すものが一番美しい」と思っています。人間には越えることができないものです。
例えば工房の前に咲いている雑草。
僕はすごく美しいと思いますが「ただの雑草でしょ」という人もいるでしょう。
でも、僕の感覚や物の見方からすると、その匿名性の自然が生み出した美しさに価値を感じる。そういうところを大事にしていきたいんですよ。


 

雑草の美しさも感じられるセンスはとても素敵です。

僕は草花がとても好きですが、花屋さんにはほとんど行きません。
やっぱり野に咲いてる方が美しいから。
どういうところに価値を見出し重視するかは人によって違います。
僕は「暮らし」から生まれる家具を作っているので、そこを面白がってもらえるといいなと思います。


 

お話をお伺いしていると、良い意味での間口の狭さがわかりました。

感覚の話でいうと、僕がとても好きな例があります。
料理関係のスタイリストさんで、人気があり売れっ子なのにアシスタントは絶対取らない。ある人が「アシスタントをさせてください」と言ったら、「私が言う赤は私にしか分からない」と言うのだそう。赤といってもいろいろな解釈があるじゃないですか。
「赤いお皿を用意して。赤い洋服を持ってきて」と言っても、アシスタントには違う赤かもしれない。「それは私にしか分からないからアシスタントは雇わない」と。
そういうところ、何となくわかるなと思うんですね。

 

価値観や物の見方は人それぞれで、強要することはできないですよね。

お互いの価値観を、強要ではなく、どう理解しあうかがとても大事です。
お客さまと話がかみ合わなくなってもいけませんので。
だから、ある程度、考えや暮らしが近い方でないとオーダーが難しいと思います。


 

ありがとうございます。それでは最後にこの記事を読んでくれた読者の方に一言いただけますか?

僕は、家具だけでなく暮らしのひとつひとつ背景を知りたいです。
食べ物にしろ食器にしろ、これがどこで作られて、どういう成分が入ってるとか。
最近は『物』の背景が見えづらくなっている部分もあると思います。

家具づくりに対しては「僕の作品はこれで、こういう技術があります」などという気はありません。ただ、僕という人間、思想、していることなどを理解して、暮らしに馴染む家具がほしいという方に出会いたい。
だから暮らし方や価値観をある程度共有できる方とお仕事がしたいと思っています。でも、僕の考えを押しつけるつもりはありません。なんとなく僕が大切にしてる部分に共感してもらえるなら、ぜひ一度ご相談ください。


 

柳さんありがとうございました!

Fremont
〒195-0063
東京都町田市野津田町803
TEL 042-860-2481
FAX 042-860-2486

 
 

Writer Profile


Takuto Suzuki
Inte-code.inc所属のインテリアコーディネーター。1991年静岡県生まれ。北欧インテリアショップの販売職を経て、inte-codeで空間のコーディネートを行う。その経験をもとにインテリアショップ体験記の運営、取材を担当。

 


Yoshiaki Ogiwara
インテリアショップ体験記のカメラマン、編集、取材を担当。
アパレル業界で10年働いた後、現在インテリアの勉強をしながら独立に向けて日々精進中。

 

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