職人体験記

工房取材!上田制作室 『.URUKUST(ウルクスト)』土平さんにインタビュー!『レザークラフトの魅力』

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「.URUKUST」工房訪問記

今回は.URUKUST(ウルクスト)を訪問し、土平さんにいろいろと聞いてきました。.URUKUSTならではの雰囲気をご確認下さい!

いつから始められた工房なんでしょうか?

2012年から始めて、8年目になります。
私は以前、アパレルメーカーでバッグのデザインをやっていたんです。

 

バッグのデザインからレザークラフト工房を始められたのですね。

もともとモノ作りが好きで、小学校の頃から刺繍をしたり人形の洋服を作ったり、何かをハンドメイドすることが好きでした。
中学校にレザークラフトクラブがあったので、レザークラフトはそのころからやっています。

 

中学校でレザークラフトのクラブってすごいですね!あまり聞いたことがないです。

部活は吹奏楽部でしたが、それとは別に不定期でやるレザークラフトクラブがあって、それに参加したことでレザークラフトが好きになりました。

 

ずっとクラフトが好きで、それが仕事になるのはとても素敵ですね。

ありがとうございます。実は音楽もとても好きで、小さい頃からピアノを習い、小学校6年生からはドラムも習っていました。昔からモノ作りと音楽はどちらもとても好きでした。当時はモノ作りは趣味で、音楽は職業としてもやりたい気持ちがあり、高校卒業後は音楽の学校に行きました。


 

初めからモノ作りの仕事をしたいというわけではなかったのですか?

そうですね。
音楽に関しては学校で作曲を学びましたが、勉強をし始めたら「ちょっと違うかも」と思うようになって。それで、昔から興味のあったモノ作りやデザインの勉強をしようと、デザイン学校に入り直しました。学校では家具やインテリアのデザインを専攻して、卒業後はデザイン事務所に勤めました。

 

どのようなデザイン事務所ですか?

いろいろなプロダクトデザインをしている事務所です。おもしろそうだったので就職したところ、ちょうどその事務所でバッグブランドを立ち上げたばかりでした。
私は昔から趣味でバッグを作っていたこともあり、型紙やサンプルを作れました。実際にサンプルを制作すると、それを評価していただいて、そのままバッグデザインのアシスタントになりました。


 

それでバッグをデザインすることになったのですね。

そうですね。その後、別のご縁もあって、アパレルメーカーに転職してバッグデザイナーとして7年働きました。私としては始めからバッグデザイナーになりたかったというよりは、流れでそうなった感じです。
 

好きなモノ作りをしていたら、結果的にバッグデザインを認められたということですね。

アパレルメーカーにいた時は、年4回のコレクションで新作のバッグを出していました。求められることに合わせたデザインが必要で、毎年同じことを繰り返しているように感じていました。
そんな中、毎年買い替えられてしまうバッグではなく、長く大事に使ってもらえるモノを作りたいと思うようになり、独立を考え始めました。

 

いろいろなことを経験した結果、原点であるレザークラフトに戻ってこられたのはとても素敵ですね。最終的な独立のきっかけはありましたか?

アパレルメーカーでデザイナーをしている時に「私にはレザークラフトが1番合っている」と思ったことでしょうか。中学生の頃からレザークラフトを始めて、バッグ制作の仕事をこれだけ長くやっても、作ること自体はずっと好きなので、この先も飽きることはないかなと思いました。
今まで、音楽、建築、インテリアといろいろなことに興味を持ちましたが、1番自分に合っているのはレザークラフトなのだと改めて感じました。
 

独立時の思いを教えてください。

「ウルクスト」という当ブランドで1番に考えたのが、「流行に関係なく愛着を持って大事に使ってくれる物を作りたい」ということ。
こちらが最初に作った製品で、ハンドメイドキットです。
このキットを買ってくれた人が自分で縫ってレザー小物を作る。自分で作るのと買うのとではまた違った愛着が湧きますよね!


 

確かにそうですね!自分で作ったものは自分が思ってる以上に大事にしますよね。

私自身、作ることが好きなので「作る楽しさを共有したい」という思いもありました。
作ることをもっと気軽に始めてほしいと思っています。
このレザーキットは一枚のパーツでできていて、中心を縫うだけではじめての方にも簡単にカードケースが作れます。

作る楽しみを提供することと、シンプルな構造を考えることは、私にとても合っていて、キットをデザインすることはとてもしっくりきました。
ブランド名も「作る」が由来になっていて、ウルクスト(.URUKUST)は逆から読むと作る(TSUKURU)なんです。


 

本当ですね!ロゴにはどのような意味があるんですか?

ロゴは最初、道具のマークを考えていました。でも「自分の手が一番の道具だな」と思い、「両手で作る」という意味を込めて手のロゴにしました。

 

次にオススメの作品を紹介していただけますか?

2つ折りのお財布です。これが一番ウルクストらしい商品かも知れません。

「お財布を作ろう」と思った時は、「そもそもお財布は何のためにあるのか」という根本的なことから考えるようにしています。「お札とカードと小銭を一緒に持ち歩きたいためにある」と思ったので、次に最低限必要なことは何か、使い勝手を良くするためにはどうすればいいかと考えます。
この2つ折り財布の特徴は、お札と小銭のどちらも出し入れがしやすいデザインです。
よくある2つ折り財布は、お札と小銭を入れる場所が別々で出し入れが少し面倒だなと思うことがあったので。

 

作りもシンプルで使いやすそうですね。

お札入れの間に小銭入れを付けたことで、開いた時にお札と小銭を同時に見ることができ、出し入れしやすい設計になっています。
また、カードポケットがたくさんあるお財布ってありますよね。

 

ありますね。そのような財布の方が多いと思います。

個人的には、よく使うカードはだいたい4枚くらいなので、カードポケットはそんなにたくさん必要だろうかと疑問で。
よく使うもの以外のカードは、ある程度まとめて1つのポケットに入れても、使い勝手として十分だと思っています。


 

これならお札、小銭、カード全て使いやすい配置になっていますね。

たくさんのカードポケットがあるとお財布自体が分厚くなってしまいます。機能を少しシンプルにすることで同じ容量のカードを入れても見た目がスッキリします。


 

本当に全てが計算されて作られているんですね。ほかにも特徴はありますか?

カード入れの片側をあえて縫っていません。革の場合、カードをたくさん入れて使っていた後、カードを減らすと、革が伸びてしまってポケットがスカスカになることがあります。
縫わないことで、10枚のカードを入れた後で1枚に減らしても厚みにフィットするようになります。


 

細部にまで配慮したデザインですね。デザインを考える時のこだわりがあれば教えていただけますか?

最初に見た目を考えないことです。
 

それはどういうことですか?

きちんとしたデザイン画を描かないで、必要なこととやりたいことをまず考えます。そして紙で模型を制作します。その段階では最終的なデザインはまだ決めていません。最初に形を決めてしまうと、その形に縛られてやりたいことができなくなる場合があるので。試作をしながら考えると自分が想像していなかったアイディアが出てくるので、デザイン画を描かないで試作をしながら考える方が良いと思っています。


 

必要なことを考えながらデザインに落とし込んでいくのですね。

無理な作り方は合理的ではありませんし、無理な作り方をするとデザインも良いものにはなりません。その考えを軸としてデザインをしています。
 

それは上田制作室(ご夫婦のお二方)で共通されてることですか?

そうですね。お互いにデザインから作るところまでをやっているので共通していると思います。制作しながらデザインを決めていく感覚は一緒です。


 

近くにクリエイティブな人がいる環境は、お互いに相乗効果が生まれていい部分が多いですか?

お互い作るものは違いますが、職人でありデザイナーであることは同じなので、考えが似ていますし悩みも同じです。なんでも相談できるのはとてもいいことだと思っています。

 

ありがとうございます。
販売以外にされている事はありますか?

レザークラフトの教室で講師をしたり、レザークラフトの本を出版したりしています。少しでも作ることの楽しさを伝えて、興味を持ってくれる人が増えればいいなという気持ちです。
 

日本ヴォーグ社から出版されましが、最近ではフランス、台湾、アメリカで翻訳したものも出版されました。
24アイテムの作り方が載っています。アイテムごとの説明と型紙がついていますので、ある程度の工具とレザーがあれば作れるようになっています。


 

この本はモノづくりが好きな人にとてもオススメですね!

できるだけ簡単に作れるように考えたので、初心者の方も十分作れると思います。
デザインもユニセックスなので、興味がある方にはぜひ手にとってほしいですね。


 

ありがとうございます。次に工房の紹介をお願いできますか?

お財布ができるまでの流れを簡単に説明します。
まずは「型入れ」。革にペンで型を描いてパーツを取っていきます。

次に抜型を使ってパーツを裁断します。クッキーの型を抜くイメージをしてもらえるとわかりやすいと思います。

裁断したパーツが揃ったら次に革を縫います。縫う部分が2枚、3枚と重なると分厚くなるので、厚くなる部分を革漉き機という機械で薄くします。

 

初めてこのような機械をみました。レトロでかっこいいですね。

そうなんです。ミシン屋さんに黒いモデルを探してもらって、とても気に入っています。
あとはこの2台のミシンを使います。こちらは腕ミシンといって立体的なものが縫えるミシンです。


 

こちらは平ミシンです。

縫うところによって2台のミシンを使い分けて縫製しています。
 

ミシンにもたくさんの種類があるんですね。
使用する前のレザー加工もされますか?

レザーはタンナーという革をなめす工場にオリジナルの革を作ってもらっています。
色や質感など、細かいところを相談しながら理想の革を作っています。


 

ご紹介いただいたお財布に使用されているパーツを見せていただけますか?

はい。2つ折り財布はこれらのパーツからできています。一般的なお財布に比べるとかなり少ないパーツ数だと思います。


 

制作前のお財布パーツを見るのは初めてでした。シンプルな素材から非常に機能的なお財布になるのは驚きです。ありがとうございます。
それでは最後にコラムの読者に一言いただけますか?

ウルクストのお財布は少し構造が変わっていますが、どれも使い勝手を重視したデザインです。ぜひ使って良さを確かめてください。
作ることにもご興味がありましたら書籍もご覧いただけたら嬉しいです。
 

土平さんありがとうございました!

 

(株)上田制作室
Ueda-seisakushitsu Inc.
224-0042 神奈川県横浜市都筑区大熊町219
219 Okuma-cho Tsuzuki-ku yokohama-shi Kanagawa 224-0042 JAPAN
TEL 045-620-5080
FAX 045-620-5690

 
 

Writer Profile


Takuto Suzuki
Inte-code.inc所属のインテリアコーディネーター。1991年静岡県生まれ。北欧インテリアショップの販売職を経て、inte-codeで空間のコーディネートを行う。その経験をもとにインテリアショップ体験記の運営、取材を担当。

 


Yoshiaki Ogiwara
インテリアショップ体験記のカメラマン、編集、取材を担当。
アパレル業界で10年働いた後、現在インテリアの勉強をしながら独立に向けて日々精進中。

 

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