職人体験記

現代まで技術継承され、祖父の代から続く家具塗装。『兵庫家具塗装』

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「兵庫家具塗装」工房訪問記

昔ながらの塗装技術は現代でも全く色褪せない技術です。
普段あまり触れることのない塗装の世界。実はとても身近にあり、至るところで塗装技術が活かされています。
今回は塗装のことをいろいろ伺うことができました。ぜひご覧ください!

祖父の代から続く塗装工房

ーーいつから始められた工房なのでしょうか?

祖父の代から数えて70年になります。当時と社名は変わってしまったのですが。
僕で4代目ですが、僕の代で社名を変えたので実質初代ですね。

ーーどのようなことをされている工房ですか?

家具塗装をメインに、内装や造作製造も行っています。
内装業においては少し特殊で、製造から塗装の仕上げまでを一貫して対応できます。
守備範囲の広さがうちの強みです。

ーーどういった製品をメインに塗装されているのですか?

ほとんどが木材関係です。
家具だけの塗装は現在、物量も仕事量も減ってきているので、店舗内装などの依頼も請け負っています。

ーー自社で造作から塗装、内装までできるんですね!

内装の仕事は、現場での色合わせやタッチアップなどの最終調整が必要になるんですよ。
うちは塗装まで現地対応できるので、その臨機応変さを評価してもらっていると思います。
ただメインは塗装ですから、祖父の代から続く塗装の技術を受け継いでやっています。

最終行程である塗装の大変さ

ーー塗装はなかなか触れることのない世界で想像がつかないのですが、大変なことなどあるのでしょうか?

祖父の頃から仕事は見ているので大変さはあまり感じたことはありませんね。
しいて言うなら、昔は溶剤系の塗装は少なかったのですが、今は溶剤系を使うことが多いので匂いに慣れていないと大変だと思います。

ーー匂いは大変かもしれませんね。他に仕事上で感じることはありますか?

店舗関係の仕事を請け負うときの納期が短いことですね。
急ぎが多いことと、基本的に断らないで仕事を受け、納期を詰め込むので大変ですね。
昼夜問わず仕事をしていた時もありました。
作業として、塗装は基本的に最後の工程なんですね。だから製造時間が伸びると塗装は本当に追い込まれて仕事をすることになるので大変ですね。

ーー塗装は一番見られる部分ですからそのプレッシャーもありそうですね。

そうなんです。例えば生地が悪いときは塗装で修正しないといけないので、そのあたりも大変な部分かもしれません。

塗装屋さんによって使い方が違う?面白い塗装の世界

ーー塗装する上でのこだわりなどはあるのでしょうか?

塗装にはスプレーで吹き付けたり、筆で塗ったりとさまざまな方法があるので、一概にはいえないのですが、お客様に喜んでもらえるような仕事は心がけていますね。

ーーお客様を一番に考えて仕事するって素晴らしいことですね。

塗装は面白くて、同じ材料でも会社によって使い方が全然違うんですよ。塗料の薄め方も全然違います。A社とB社の材料を混ぜて使うなど、それぞれ独自のやり方があるんです。

ーー塗装屋さんによってそれぞれまったく違うやり方になるということですか?

全然変わってきますね。
使い方や用途で違ってくるので面白いところでもあり、難しいところでもありますね。

ーー塗装の材料はどのようなものを選ばれているのですか?

昔から付き合いのある業者さんやお客様ですと基本材料は変えません。
「これを使いたい」と言われれば、その材料を仕入れることもあります。
あとはお客様によって変わってきます。材料指定があればそれを使いますが、新しい材料がどんどん出てくるので、チョイスが結構難しいですね。

ーー基本的にはお客様に合わせて材料を選んでいくということですね。

それでお客様の希望にできる限り近いものができて喜んでもらえたら嬉しいですね。

現在では少なくなっている技術。水砥の粉(みずとのこ)とは?

ーー他の塗装屋さんにはないこだわりなどあるのでしょうか?

水砥の粉(みずとのこ)と呼ばれる「目止め剤」があるのですがこの水砥の粉を使っているところは少ないと思います。
※目止め:木の導管(木が植物として生きていた頃、水や養分を吸い上げていた管状の器官)にとの粉を押し込むことで穴を埋め、表面を平らにする工程。

ーーどうして水砥の粉を使用する塗装屋さんは少ないのですか?

水砥の粉は乾燥が早くてどうしてもムラになりやすく手間がかかってしまうんです。
乾燥しないうちに拭き取らないといけないので技術も要りますし、扱いも難しいんです。
神戸洋家具は昔からこの技法を活用しています。水砥の粉を活用してベースを作って仕上げていくスタイルは神戸洋家具の伝統ですね。
祖父の頃からずっと同じやり方です。ただ人によってやり方や工夫が変わってくるので、僕の塗り方と祖父の塗り方は違うと思います。

ーー昔からの製法をずっと続けられるのはすごいですね。今の主流の方法とは違うものなのですか?

現在、一般的に主流なのはウレタン塗装です。
ウレタン塗装は大体2割ほどベースに下色として着色をして塗膜を張り、その塗膜の上から色をかけて調整するやり方が一般的です。
ウレタン塗装はある程度簡単に、均等に色があいます。全ての工程で効率化を図り、利便性や実用性の高い塗装です。
水砥の粉や着色で合わせようとすると色の違いなどを調整しながらの作業で、結構大変ですね。今この塗装方法ができる工房はなかなか少ないと思います。

ーー塗装剤でやり方が変わってくるんですね。

変わってきますね。
うちの工房は下色で8、9割合わせます。今それをやっているところは少ないと思います。
木材に合わせようと思ったら半日程度はかかってしまうので。
きちんとした元請けさんや会社さんは木材もしっかり合わせてくれますが、予算などの兼ね合いで違う木材のときもあります。そういう場合はもっと時間がかかってしまいますね。

ーーなるほど、木材が変わると色の入り方も変わってくるのですね。

そうですね、とてもシビアな世界です。
ただ、この技術は古い家具も建物でも当時の仕上がりのまま再現することができるので、文化財の修復などの大変名誉な依頼も多くあります。

ーー今までいろいろな塗装をされてきたと思うのですが、一番思い出に残っている仕事はありますか?

一番思い出に残っているのはテナントの塗装です。
基本的に店舗関係は納期が短いので、短期間で仕上げなければいけないんです。
「こんな物量、よく2、3日であげたな」っていうのが何度かありますね。
そういう仕事がやはり思い出に残っています。

ーー「徹夜してでも仕上げる!」と気持ちがないとできないですね。

そうですね。
当たり前のように一晩中、塗装していることもありましたね。

記事を読んでくださる読者の方へ一言

ーー最後に記事を読んでくださった読者の方へ一言お願いします。

家具塗装屋とペンキ屋さんは違います。あまり考えたことがないと思いますが。
「どちらも同じ」だと思っている方は家具塗装で失敗されることがよくあります。
ペンキ屋さんが失敗した家具を、僕がリペア依頼されることもあります。
家具塗装には、家具塗装ならではの技術やペンキでは出せない加工もあるので、この機会にぜひ家具塗装を知っていただけたらと思います。

ありがとうございました!

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