職人体験記

神戸洋家具伝統の刳物工房『平和木工所』

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「平和木工所」工房訪問記

刳物(くりもの)という技術をご存知ですか?
刳物ができる工房がだんだんと少なくなっていく現在、今も刳物を続けている「平和木工所」。
ほかでは見られない2mを超える旋盤での仕事は、まさに職人技!
とても迫力があります!
ぜひご覧ください!

いつから始まった工房なのか。そして刳物とは?

ーーいつから始められた工房なのでしょうか?

工房として40年以上になりますね。現在2代目でやっています。

ーー現在はどのような家具を作られているのですか?

昔はいわゆる神戸洋家具と呼ばれる高級家具が多かったのですが、今は造作家具をメインで作っています。

ーー造作家具はどのようなものを作ることが多いのでしょうか?

百貨店や店舗系の収納などが多いですね。
昔のように凝った家具というよりは簡素化されてシンプルな家具がメインになってきました。

ーーこちらの旋盤は、造作家具を作る時に使われるものなのですか?

この旋盤では洋家具などで使われる椅子やテーブルの脚を作っています。
刳物(くりもの)と言って複雑な曲線や丸みのある形を出すのに旋盤を使用します。
今ではそういった彫刻的な刳物をいれる椅子やテーブルも少なくなってきました。

工房を継いでから一番辛かった時期

ーー簡素化されてシンプルになっているから少なくなっているのですね。

さまざまな状況の変化があったと思いますが、職人をされていて辛い時期などありましたか?
今年のコロナウイルスの流行で、全てを含めても今が一番辛いかもしれませんね。
以前に比べると依頼も1/3ほどになりました。

ーー最盛期は何人くらいの職人さんで運営されていたのですか?

刳物職人としてはずっとひとりでやっています。
昔は刳物の工房も兵庫県内に何軒かありましたが、今はもうほとんどなくなってしまいました。
時代の流れだと思いますが、昔は一軒家も多く、家具を揃えるとなれば高級家具の注文も多かったのです。
今はマンションも増え、備え付けの収納が多くなりましたから家具を買うことが減っていくのは仕方のないことかもしれません。

ーーそうした厳しい現状でもこうして続けられるのはすごいことだと思います。

高級家具の依頼は年に数回ほどですが、その仕事はしっかりこなしてお客様に満足いただけるように心がけています。

規格外に大きい旋盤とノミのこだわり

ーー刳物で使われるこの旋盤は、とても大きいですね。

2m70cmまで製作できるサイズです。
ここまで大きい旋盤を持っているところはほとんどないと思いますよ。

ーー刳物はどんな木材でも可能なのですか?

基本的には可能ですが、木材には硬い木と柔らかい木があって、松などの針葉樹は硬く比較的刳物をしやすいですが、ラワンなどの紅葉樹は柔らかい木で刳物をしにくいですね。

ーー柔らかい木が作りにくい理由があるのでしょうか?

柔らかい木は削る時に、木材に当てているノミが引っかかってしまうんです。
特にノミの切れ味が落ちてしまうと、すぐに引っかかってしまいます。
ですから切れ味を維持しながら削っていくことが非常に重要です。

ーーノミは切れ味がとても重要になってくるのですね。ノミへのこだわりはありますか?

ベースのノミは購入します。そして「グラインダー」と呼ばれる研ぎ石で研いで、削りやすいように自分で作ります。
そして木を削りながら、ノミを研いでいくのです。

ーー自分で使いやすいように研いで、刃のサイズを変更していくのですね。ノミの種類がいくつかあるようですが用途によって使い分けているのですか?

そうですね。
彫る場所や、溝の細さ、太さで使うノミの大小も変わってきます。

ーーノミはどちらで購入されているんですか?

大阪の大正区にある工場で購入していたのですが、この工場もなくなってしまったんです。
だから、現在持っている分がなくなってしまうと終わりなんです。

ーーなくなったら製作できなくなるのでしょうか?

探したらあるのかもしれませんが、現状、需要が少ないので作っている工場が知る限りはなくなってしまいました。
ただ、このまま終わりにしたくありませんから、今後どうするか考えていきます

手作りと機械で製作する違いとは!?

ーー刳物製作にてどんな所にこだわりを持って製作していますか?

やっぱり見栄えが一番だと思います。
丸い脚なら綺麗な丸、曲線を出すようにイメージしますし、角ばってるのであればしっかり角を立てて作る事を意識しますね。
今の時代ならすべて機械でできることですが、機械だとどうしても完成がぼやけてしまうんです。

ーー完成がぼやける理由があるのでしょうか?

使う刃の違いですね。
専用の凹凸のついた刃を使用して押し込んで削るだけですから簡単なんです。
ただ最後の仕上げで、どうしてもはっきりとした凹凸にならないので、そこは手作業で作ったものの方がはっきりと線がでますね。
手で彫っていくことで、えぐり込むようにように彫っていけるので、はっきりと立体感のあるデザインを作ることができます。

ーーこの立体感が機械では出せないポイントなんですね。

ーー削っているときに旋盤の回転スピードも変えたりするのですか?

削る木材の大きさによって、大きな木材ならゆっくり回すなどその都度変更します。
あとは削りたい箇所、硬さなどでも回転のスピードは調整します。

ーー製作を始める前に図面などを起こされるのですか?

もちろん原寸で簡単に図面に起こしてから削り始めます。

ーーこんなに簡単な図面でキッチリ作れるのですか?

もちろんしっかりした図面があるのでそれを元に自分の作りやすい図面にします。
そして「パス」という器具で傾角を測りながら図面通りに削っていきます。
ですが、最終的には今までやってきた感覚と経験ですね。

ーー経験と感覚を培ってきたからこそできるものなんですね。
思い出に残っている実績などあればご紹介いただけますか?

今は2m70cmまでの刳物しかできませんが、昔3m以上の木材を削って、直径2mくらいのお椀を作りました。
それが今まで作ったなかで一番大きなものだと思います。

ーーそこまで大きな椀も作っていらっしゃるのですね。やはり技術があってできる技ですね。お願いするお客様も安心して依頼できますね。

記事を読んで下さった読者に一言

ーー最後に記事を読んでくださる読者の方に一言お願いします。

昔に比べるとどうしても刳物の職人、工房の数は減っています。
神戸洋家具の文化としてこのままなくなっていくのは、とても寂しいことです。
ただ、少なくはなっても今後も残り続ける文化だと思います。
技術的な部分でも満足して楽しみ、感動できることがあると思います。
この機会に少しでも神戸洋家具に興味を持っていただけたら嬉しいですね。

ありがとうございました!

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