「家具屋イヱノbyイシワタ民具製作所」工房訪問記
今回は「家具屋イヱノ」を訪問し、石渡さんにいろいろなお話を聞いてきました!
石渡さんの「こだわりがないこだわり」とは?キャンプで使うちゃぶ台?
石渡さんが考える面白い家具のお話をたくさん伺いましたのでぜひご覧ください!
工房のスタートと独立のタイミング
ーーいつ頃から始められた工房なのでしょうか?
大学を卒業してから家具メーカーの「ウッドユウライクカンパニー」で7年半修行し、2011年に退社しました。
その後、物件を探しながらアンティークのリペアや知り合いの工房などで製作活動し、2014年の10月にオープンしました。
ーー大学では木工関係の勉強をされていたのですか?
大学は木工とは全く関係のない大学でした。
大学3年の時に旅行でヨーロッパを回ったことがあるんですけど、その時に、もの作りを見てすごく楽しそうだなと思ったんですね。
それで手に職をつけたいと思ったときに「木工」かなと。
自分で作れるようになったら楽しいんじゃないかなと思ったんです。
ーー初めから独立しようという気持ちはあったのでしょうか?
独立したいという気持ちは常に持っていました。
ただ、修行時代は独立のことは考えず、技術が身につくまでしっかりやろうと思っていました。
自分で一通りのものを作れるような知識や技術が身について、ギャラリーや工房の運営ができるなと思ったときが、独立しようと思ったタイミングでした。
工房を初めて辛かったこと「東京の闇」とは?
ーー独立されて6年ほど経過して辛かったことはありますか?
僕は基本的に辛かったと感じることはあまりありません。
工房を始めたばかりで売れない時でも、不安はありましたが、辛いとはまた違うんですね。
どんな仕事でも一緒で、自分だけが辛いわけじゃないし、不安なわけじゃないと思うので。
僕はまだ自分の好きなことをやっているから良いのかなと思っています。
強いていうなら、東京という土地柄、どうしても工房が狭いところや、時間に追われてしまうところが辛さかなと思います。
ーー時間はある程度ゆったり余裕を持ちたいですよね。
仕事を連続して休むと不安になります。「あの仕事を進めないといけないのに休んでいていいのか」って。
定休日を決めているわけではないので、休みを決めたときには「まだ仕事があるのに休んでいいのかな?」とか。いろいろ考えてしまいますね。
ーー常に仕事をことを考えて動けるって石渡さんすごい体力ですね。
僕は「東京の闇」と呼んでいます。笑
ーーそんな「闇」初めて聞きました。笑
その「闇」に飲まれないように、休みの時は海や山にいってしっかりリセットしますね。笑
このリセットする気持は、個人的にはすごく大事なことで、次の仕事にしっかりつながるように考えていますね。
ーーリセットは大事ですよね。ご依頼はどのようにされることが多いですか?
基本的なホームページを用意し、SNSでの発信をしています。
すぐに認知されるものではないと思っていたので、その間は自分の作りたいものや試したいものを作っています。
他には、地域のイベントなどに参加したり、近隣にいるクリエーター、職人さんとコミュニケーションをとって情報をもらったりしています。
そこでお客様を紹介してもらえて、現在に至る繋がりも増えていきました。
ーーそのようなイベントでしっかりとコミュニケーションが取れて、お客様と接することができたから現在に繋がっているということですね。
作って売るだけなら誰でもできるんです。
でも実際は売るだけではないので。
僕が作ることで「木っていうのはこういう使い方もあるよ、こういう見せ方もできるよ」とそんなオーダーメイドの楽しさを感じてもらえたらと思っています。
お客様と話すことで浮かんでくるアイデアもありますからね。
石渡さんが考える「こだわりがないことがこだわり」の意味
ーー製作活動をする中で、どういったこだわりを持って製作されるのですか?
僕は「こだわりがないことがこだわり」だと思っています。
ーーそれはどういうことでしょうか?
僕にとっては、「いつも通り」のことがまわりからはこだわりになるのかなと。
こだわりというのは、見てくれた第三者の方が「石渡くん、この部分こだわっているね」と言うならわかるんです。自分から「ここの部分をこだわっています」と言うのは違うのかなと。それは自分が発信することではなく、相手(お客様)が決めるものだと思っています。
いつもクオリティの高い家具を製作しているので、それについて自分から言うことではないんです。
ーー作品はもちろんすべて良いと思って製作しているのだから、自信を持って提供しますよね。とても素敵な考え方ですね。
一個一個「これがこだわりなんです」と言われても、お客様にとっては多分そういうことじゃないと僕は思っていて。
お客様は家具をなでたり触ったりされることが多いのですが、肌触りとかそういうところが大事なのかなと思うんです。
僕はそういうところを大事にしようと思っています。
例えば触るポイントを作ると、そのポイントは皆さん触るんですよ。ちょっとしたポイントがデザインに入っていると、木も今以上に愛着を持って理解してもらえるかなと思います。
ーー愛着を持ってもらうために、そのポイントをデザインに落とし込んでいるのですね。
お客様も、いきなりでは何もわからないじゃないですか。
お客様の意見に職人の意見をすり合わせてオーダーメイド家具ができます。
サイズを変更することだけがオーダーメイドではありません。
僕の家具は、写真だけみると「すごくシンプルな家具だね」と言われます。
シンプルでも、僕と使い手のお客様にしかわからない思い入れがあるので、その気持ちや想いを大事にしています。
家具屋イヱノは地域に愛される北千住の相談役
ーーこの北千住で工房を構えられた理由はあるのですか?
昔は工務店はどこにでも必ずあったと思うんですけど、この周辺には工務店や木工工房がなく、気軽に木の事や家具などの相談ができる場所がないんです。
お客様が気軽に相談できる場所がなくなっていくように感じました。
だからこそ僕はここ(北千住)に工房を持ちたいと思いました。
ーー地域によっては工務店がなくなっている所もあるのですね。
そうですね。
だから北千住に工房を構えてから「これ直せる?」「昔の母屋の柱を家の中に建てられない?」など、相談を受けることもありますね。
ーー柱を建てるって家具職人の域を超えていませんか!?
本職ではありませんがご相談にはのります。
もちろん難しいこともありますが、そうやって相談してくれるのも嬉しいですし、できるだけ応えてあげたいと思いますね。
ーー北千住の相談役みたいになっていますね。笑
大通り沿いに工房があるので、結構人通りも多いんですね。
それで毎日「頑張って」とか「今日も飲みに行ってくるよ」とか、声をかけてくれる方もいらっしゃいます。少しずつですが北千住に密着できているのかなと思います。
石渡さんがオススメする作品を紹介
ーー石渡さんの思い入れのある商品を教えていただけますか?
まずは総無垢の2mのダイニングテーブルです。
このテーブルを2階まで一人で運んだんですが、それも含めて思い入れがありますね。
ーーこのテーブルを一人で運ぶのは大変ですね!こちらのテーブルの特徴を教えていただけますか?
基本的にこのギャラリーに並んでいる作品は、僕の好きな形をデザインに落とし込んで作っています。
このテーブルは2mあります。
1m80cm以上のダイニングテーブルは幅が90cm程度のテーブルが多いのですが、僕はボテッとしたシルエットがあまり好きではないので、幅を85cmにしています。
そうやってシルエットを考えつつデザインしています。
ーー一般的なダイニングテーブルよりもスッキリとして見えたのはそういう理由だったんですね。
他にも特徴があれば教えてください。
シンプルで四角いデザインにしているのですが、スタイリッシュに見えるようにレッグを内側に入れました。またデザイン上、太い脚にはしたくなかったので太さもギリギリにしています。
脚を内側につけても、椅子を3脚並べることができるサイズ感を意識して作りました。
ーーデザインも特徴的でありながら、使いやすいテーブルになっていますね。
そうですね。
一度購入したら、ずっと使い続ける家具だと思うので、使いやすいというのは大事なポイントだと思います。
横揺れもしない、反りも出ない、無垢の厚みをしっかり出して、一生使えるようなテーブルを作れたらと思いますね。
ーーこちらのダイニングテーブルのオススメの使い方などあれば教えていただけますか?
椅子を3脚ずつ並べて使って欲しいですね。
総無垢のダイニングテーブルを置くだけで、普段の生活もまた違ったものになるので、無垢の木のある生活を楽しんで欲しいです。
ーーありがとうございます。次の思い入れのある作品を教えていただけますか?
このスツールです。
ーーこのスツールのこだわりや特徴を教えていただけますか?
玄関やお風呂場、キッチンなどで、女性がさっと持ち運べて使いやすいように手掛けをつけたデザインにしています。
ーーこのスツールは持ち運びも簡単ですし、日常生活で使いやすいですね。
座面を削っているところも意味があるのですか?
平面ですと、ずっと座っているとどうしてもお尻が痛くなってしまうので、お尻の形にフィットするように削って丸みを帯びさせています。
ーー長時間座っても疲れない工夫がされているのですね。脚のデザインも特徴的ですね!
「女性らしく」のイメージと、僕の好きなヴィンテージ調を意識したデザインにしました。
ーーこちらのオススメの使い方を教えていただけますか?
僕はこのスツールとちゃぶ台をキャンプで使います。
ーーえ?キャンプですか?
キャンプの椅子と座卓にして使っています。オススメですよ。
ーースツールはまだわかりますが、ちゃぶ台をキャンプで使うのですか?
このちゃぶ台は脚をたためるデザインにしているんです。
持ち運びはしやすい設計なので、持っていけますよ。
ーー僕もキャンプが好きなのでよく行くのですが、ちゃぶ台を使っている方見たことがありません。ですが、実際こうやってちゃぶ台と並んでいるとキャンプで使っているのが想像できますね。
もしキャンプが好きなら、今度ぜひ使ってみてください。笑
ーーありがとうございます。ぜひ検討してみます。笑
家具屋イヱノの工房紹介
ーー次に工房を紹介していただけますか?
工房の広さに限界があるので、その時に使う機械を出しやすいようにキャスターをつけています。
ーーなるほど!それですべての機械にキャスターがついているのですね。
そうです。大きい家具のとき、小さい家具のときと、その都度移動させて使いやすいように考えています。
広い工房ではないので、同業者の人が見て「このサイズの家具を作れるの!?」と言われることもありますが、工夫することが大事ですね。
小さい工房だからこそできることもあると思っているんです。
例えば、広さに限界があるので片付けながらの作業になります。そうするとおのずと綺麗な工房を保つことができ、清掃や整理に時間をかけずに製作時間を作ることもできます。
ーー意外と清掃や整理に時間をとられることって多いですよね。
他にも全て手の届くところにあるから次の工程に入りやすいですね。
以前は機械場と製品を組む所が別のフロアになっていたので。
ここならすぐに作業に移せますし、時間効率を考えると大きなメリットだと思います。
ーーありがとうございます。
石渡さんから、読者の方へ一言
ーー最後に記事を読んでくださる読者の方へ一言お願いします。
無垢の木の家具、オーダー家具はどうしても高いイメージがありますし、なかなか買えるものでもないと思います。
ただ、先のことを考えて長く使える家具を選んで使っていただきたいと思います。
いきなり家具からでなく、小物からでも良いので「無垢の木」を感じられる物を選んでいただけたらとても嬉しいです。
石渡さんありがとうございました!
〒120 - 0044
東京都足立区千住緑町3 - 1 - 28
TEL : 090 - 4426 - 9445
ギャラリーオープン
金・土・日・月
OPEN 11:00
CLOSE 19:00
ギャラリー定休
火・水・木
※火・水・木は、工房にて製作メインとなりますので事前予約制にてギャラリーをオープンいたします。
納品や打合せで外出している場合があります。