「ナガノインテリア」メーカー訪問記
今回は福岡県朝倉市に本社を構える「ナガノインテリア」の永野社長にお話を伺いました。
現 永野社長の就任を転機にナガノインテリアは大きく変わっていきました。どういった経緯で変わっていったのか、今のナガノインテリアになるまでのお話をぜひご覧ください。
>>ナガノインテリアに新たに誕生する「THE FACTORY」記事はこちら
ナガノインテリアの始まり
ーーナガノインテリアの成り立ちを教えてください。
ナガノインテリアは1946年2月11日に創業しました。
今年で75年目になります。
少し前の日本には人を招くおもてなしの文化があり、今でいうリビングは「応接間」といい、人を招く場所でした。そのためナガノインテリアでもその「応接間」にあうような家具が多かったですね。
現在は応接間に置くような家具などではなくなり、ライフスタイルに併せた家具を提案するようになってきました。
ソファーは単体で置くようになり、カジュアルな空間として暮らしに定着するようなものに。ダイニングではちゃぶ台からダイニングテーブルや椅子を提案するようになりました。
昔のカタログをみると高度経済成長の中で豊かになっていく日本がとてもよくわかります。
60年代からのカタログを残しているので、見てもらえたら当時を感じられる部分があると思います。
ーー本当ですね。現在の暮らしで使われる家具とは思考、デザインなども全然違いますね。
顧客層の変化。移り変わるナガノインテリアの家具
ーー現在のナガノインテリアを作ることになった当時のお話を伺ってもよろしいですか?
私が入社したのは24歳の時で、顧客層のメインが50〜60代の方でした。
当時は堅牢で機能性がある家具を製作しており、24歳の私にはどうしても受け入れられませんでした。
自分がそのような家具を作っている会社の社長になるイメージができなかったんです。
「この家具じゃない」と思いましたし、「こういう会社の社長になりたくない」と思っていました。
ーー以前の家具のイメージを一新することはとても大変だと思います。
永野社長はどのように顧客層を若く変えていったのでしょうか?
当時、私と同世代の社員はほどんどいなくて、社員の平均年齢も50代に近かったと思います。
その中で全部否定されることもありました。しかし信念をかえず私自身が開発に携わり作り続けてきました。
ーー製品開発にしていく中で、デザインやこだわりはどういった部分だったのですか?
デザインに凝った作りの家具が多かったのですが、それがとても嫌でした。
2000年代に流行していたPVC素材のソファなどでは、ナガノインテリアの良さが十分に発揮できないと感じていました。
だから余計な物をとってシンプルに、そして素材感や木工の強みを生かした製品を作りたいと思い商品開発を続けました。
もちろんデザインだけではなく、品質、コストのバランスも考えた家具作りを考えていました。
私が27歳の時に、現在のナガノインテリアの形を打ち出して行ったのですが、まだ若く、感覚的にもマッチしない部分がありました。
数年が経ち、私の考える形で顧客層とナガノインテリアの家具が重なりマッチするようになったのが2010年くらいですね。
ーーそうやって革新されたナガノインテリアは、どのようなコンセプトで家具を作られているのでしょうか?
ナガノインテリアの一番の強みとも言える「顧客志向」でやっていくことです。
受注生産も幅広く取り扱い、それをいかに効率よくやっていくか。これはお客様のことを一番に考えてるからこそできることなんです。
そのためには余計なものを取り除いてシンプルにしていく。工場の中も一緒で、一貫生産することで余計な仕事をする必要がなくなり、シンプルになります。
ーーナガノインテリア全ての行程が「顧客志向」というコンセプトに通じているのですね。
ーー先ほど工場を見学させていただきました。乾燥から製造まで一貫して作業されていて、しっかりとした生産ラインがありましたね。これは全てお客様のことを考えているからこそなんですね。
以前は一貫生産ではない時期もありました。
九州には福岡県の大川市、大分県の日田市といった家具産地があります。分業体制がメインで一貫生産している会社はほとんどありません。
ですから分業制の会社と取引をしていました。しかし弊社とは距離が遠く、まとまった量でないと引き受けてくれなかったり、取引として成り立たないと言われたりして、アウトソーシングを活かしたものづくりに限界を感じたんです。
このままでは納期も長くなってしまうし、良いものを理想の金額でみなさんに届けられないと思い、外注するのではなく自社で製造するようになっていきました。
そこから商品数を増やし、受注生産も増やしていきました。
結局、一貫生産を強化したことで、外注して作っている時よりも生産過程の長さも短縮できて早くお客様に家具をお届けできるようになりました。
ーーありがとうございます。生産から一貫して自社で作ることで今の商品に繋がっていっているんですね。
特有の個性を出さないナガノインテリアの「ベーシック」
ーーナガノインテリアのデザインコンセプトを教えていただけますか?
ナガノインテリアのデザインコンセプトは「シンプル」で「ベーシック」であること。
特有の個性をあえて出していません。
ーーあえて個性を出さない理由があるのでしょうか?
現在、海外も含めてさまざまな家具ブランドがあります。
その中でナガノインテリアの家具だけで部屋のインテリアを揃えることに違和感を持つのです。ファッションも全身同じブランドで揃える人って多くないですよね。
家具も一緒で、いろいろなブランドの家具を置くことで個性が出てくるんです。
もちろん、ナガノインテリアの家具を揃えて使ってくださるお客様もいらっしゃいますし、それはとても嬉しく思います。
でもそれ以上に他の家具との融合性、日々の暮らしの中に馴染む家具というのを目指しています。
融合性を高めるには「ベーシック」であることが非常に重要なポイントなんです。
そしてお客様自身でお部屋を自由にカスタマイズできる家具であること。お客様のご要望に対応できるのがナガノインテリアの個性を出さない家具であり個性なんです。
ーーシンプルでベーシックだからこそ、その空間の融合性が取れて、それが個性になっていくのですね。
そうです。
落ち着く空間、馴染む空間というのは統一することではありません。
私自身が生活で意識していることでもあります。いろいろな家具を見て、選んで、好きな物を買うから家具は楽しいものなんです。
自社の山で採れた木材で作られる家具
ーーナガノインテリアでは山を保有管理されていますよね。その山の木材を使用しているのですか?
もちろん木材の種類によっては海外から輸入する木材もあります。杉は自社で保有している山で伐採された木を使用します。
ーー創業の時からずっと自社の山で採れた木材を使っているのでしょうか?
山は祖父の代から持っていたのですが、当時は木が一番の資源だったということもあり、山を保有するということがステータスでシンボルだったんですね。
ですから祖父の時代はただ保有しているだけでした。
ーー最初は会社で使うために山を保有したわけではないのですね。
何がきっかけで自社の木材を使うようになったのですか?
以前は北米から輸入した杉材を使っていたのですが、「せっかく近くに資源があるのだから使ってみよう」と思って。
自分で選んだ木を切って製材していく体験をして、天然の生きた資源を使っていることを肌で感じることができました。とても素晴らしいことだなと思ったんです。
ただ、むやみに伐採しているわけではありません。あくまでも間伐材を使っています。
地元の木材市場からの仕入れもしつつ使っています。
※間伐:過密になった木を適切な生育状況にするため伐採する作業のこと。
ーー自分で選んだ木を製品にできるなんて作る側の思い入れも全く違いますね。
そうですね。
自分たちで山に入り、選んだ木材を製材し家具にしてお客様に届ける。すぐそばに資源がなければできませんし本当に作る側も楽しいことです。
購入してくださるお客様だけではなく、作る職人にとってもとても贅沢なことだし、究極だと思います。
永野社長のもつ会社のビジョンとは
ーーいろいろとお話を伺いましたが、永野社長が考える今後の「ナガノインテリア」のビジョンを教えていただけますか?
私が持っているビジョンは、、世間に届く会社に成長すること、そして社員が誇りを持って仕事ができる会社にすること。これが全てだと思っています。
ものづくりをしている以上、皆様に知ってもらって価値のある世界です。誰も知らなかったら意味がありません。
そして誇りを持って仕事ができるということは、モチベーションを保つことにも繋がります。その中で新しい企画なども生まれてくるものだと思います。
数年前に新しくしたユニフォームの袖に「ナガノマインド」とつけることもそのひとつです。
以前はいかにも工員みたいな薄緑のユニフォームだったんです。
社員も若返ってきたタイミングで、思い切って変えようと思いました。
ユニフォームが新しくなれば社員のモチベーションも上がります。ですから色は社員に決めてもらったんですよ。
ーー働くスタッフのモチベーションを考えて行動できることは本当にすごいと思います。
ナガノインテリアは全国に広まっていますが、全社員のうち85%はこの本社にいるんです。
すべての家具が作られる場所ですから、本社に人が集まる社員の環境を作らないといけません。
他にもブランディングのひとつとして、2020年の秋から商品のプレートを変更しました。
ーー「Made in Asakura」となっていますね。これにはどんな意味が込められているのですか?
朝倉市でものづくりをしていることを表現し、認知してもらうために「Made in Asakura」をつけました。
家具といえば大川市や日田市というイメージが強いんです。
朝倉市に会社を構えても大川の家具ブランドと認知されてしまうことも多く、それが悔しい部分でした。
朝倉市に家具の会社があると思っていない人も多く、そのせいで人材採用面でも人が集まりにくい会社になってしまうんです。
ですから朝倉市にある家具メーカーは「ナガノインテリア」と言ってもらえるように、大川、日田という流れを一新して世間に認知される会社に成長するためです。
記事を読んでくださる方に一言
ーー最後に記事を読んでくださる方に一言お願いします。
ナガノインテリアには歴史があり、そこに組み上げた理念があります。
その理念というのは、顧客満足度や顧客目線のものづくり、ここで働く社員すべてが循環している企業であることです。
お客様からいただいた声をすぐに工場やデザイナーに相談できる環境ですから、すべてに対してスピード感のある会社だと思うんです。
今後もっとナガノインテリアを世の中の方に知ってもらうために、社員一丸となり成長していきますので、ぜひご注目ください。
永野社長ありがとうございました!
NAME | ナガノインテリア工業株式会社 |
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TEL | 0946-22-3314 |
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ADDRESS | 〒838-0068 福岡県朝倉市甘木2153 |
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