今回は「アーコール」の総代理店「ダニエル」の代表咲寿さんにお話を伺いました。
座り心地が良いのは当たり前。隅々まで行き渡っている職人の技術が本当に素晴らしい。そう語るのはイギリス老舗家具ブランド「アーコール」と総代理店契約を結ぶ横浜クラシック家具「ダニエル」の代表咲寿さん。今回は咲寿さんに「アーコール」おすすめの「バタフライチェア」の魅力を伺いました。
イギリス老舗家具ブランド「Ercol(アーコール)」とは
ーー「アーコール」とはどのようなブランドですか?
1920年にイギリスで誕生した老舗家具ブランドです。元々イタリア人のルシアン・アーコラーニというデザイナーの方がイギリスに渡り立ち上げたのが「アーコール」です。曲木を使った緩やかな曲線、私たちは湾曲した弓なりの曲木とも表現しますが、この曲木がとにかく美しく、当時の技術者たちを驚かせたのもこの「アーコール」です。
昔からあるブランドのほとんどが淘汰される中、世界的に見ても各国できちんとブランドとして認知されているのは「アーコール」だと思います。
「アーコール」と「ダニエル」の出会い
ーーイギリスを代表するブランド「アーコール」と「ダニエル」はどのように出会い、日本の総代理店になられたのですか?
「アーコール」が日本に登場したのは1960年代後半、百貨店の高島屋グループがオリジナルブランドとして輸入したのが始まりです。「ダニエル」は、当時高島屋に商品を供給していたので、その繋がりから「アーコール」製品のメンテナンスも請け負っていました。
もう少しで2000年を迎えるという時に、高島屋グループが「アーコール」の独占販売をやめたことをきっかけに、駐日英国大使館の方から私たち「ダニエル」にアプローチがあり、弊社での取り扱いが始まりました。
ーーなるほど。それで「アーコール」の総代理店になられたのですね。
バタフライチェアから見る洗練された先人の職人技
ーー「アーコール」の中で咲寿さんが一番好きなチェアを教えてください。
名作はたくさんありますが、やはりバタフライチェアが一番ですね。デザイン的には本当に古くて1958年にデザインされているのですが、積層合板を曲げるという当時では非常に珍しい技術を使っていたり、技術者のこだわりが細部まで行き渡っている作品だと思います。
ーー後ろから見たシルエットも特徴的ですよね。
そうですね。隠し釘になってる所を敢えてアクセントにしていて面白いですよね。
ーー隠し釘とは何ですか?
背中と座面をつなぐアングルを固定する際にビスで留めるのですが、そのビスが見えないように丸型の木栓を付けています。
それがまた一つアクセントになっていて素晴らしいですよね。あとはこのアングルの曲線ですね。グーっと伸びていく。この辺りが「アーコール」らしいチェアの技術ですね。
伝統的な技法で言うと楔を打ち込んでいく脚の接合部分も特徴的です。
最近の椅子は、座面と脚を接着するだけなのですが、これは完全に昔ながらの技法で、脚を貫通させて上から楔を打ち込んでいます。
打ち込んだ楔は座面から1.5cm程でているのですが、今度はそれをカットしなければなりません。座面が曲線になっているのでノミで突く事も出来ず、今だと回転する大きなやすりにあてて削り落としていく感じですね。
ーーなるほど。ここの部分も凄く手間がかかっているのですね。
これは見た目以上に職人の技と手間がかかっているチェアだと思います。
ーーこの椅子一つに「アーコール」の技法がたくさん詰まってるということですね。それも1950年代に。
その当時の最先端だと思います。今見ても「あー凄いな。ここまでやるんだな」と感服してしまいます。
60年たった今でも劣化しない普遍的なデザインと座り心地
ーーこのバタフライチェアの一番好きなポイントを教えてください。
60年経った今でも変わらず新しいものとして感じられるデザイン性と、あとはカラーのバリエーションによって現代風にもヴィンテージ風にも表情を変えるところが面白いと思います。オリジナルのモノは経年変化を楽しめるというのも魅力ですね。
ーー機能面でのおすすめを教えてください。
椅子というのは座り心地が良いのは当たり前なのですが、これは特に背面も座面も曲線なのでお尻や背中に凄くフィット感が出ていると思います。ピッタリと沿う感じがしませんか?
ーーお尻と腰の間のフィット感が凄いですね。荷重に対して少し曲がる感じがします。これは木だから上手くフィットするのですか?
そうですね、そういう機能があります。しなり感がちょうど良いですよね。
あとはこの背中。椅子は基本テーブルにしまうことが多いので、私たちが日頃目にしているのは椅子の背中ですよね。このバタフライチェアは置いた時の背中の眺めが本当に綺麗な椅子だと思います。
ーーなるほど。後ろから見えた時に綺麗かどうかも一つの価値になっているということですね。
この椅子は眺め続けていても飽きがこなくて。これを見ながらお酒が飲める。語れるっていうのはありますね。
ーー凄く分かります!家具好きだとついやってしまいますよね。
「ダニエルが」勧めるヴィンテージ家具のメンテナンス方法
ーー正直メンテナンスが難しそうだなと思うのですが、特別なメンナンス方法はありますか?
基本的には全て乾拭きが一番です。
ですが、ヴィンテージの家具は輸入する前の段階で剥離をしていることが多いので、ワックスや蜜蝋で塗膜を保護してあげないといけません。さもないと木が暴れてしまったり、スポークや座面が甘くなって抜ける原因になってしまうため、普段は乾拭きをして必要に応じてワックスや蜜蠟を塗っていただくのが良いかと思います。
これが「アーコールワックス」です。日本でいう蜜蝋のようなものですね。
ーーこれはオイルとは違うのですか?
ワックスや蜜蝋は、オイルのように浸透するというよりは上から塗膜を作るというイメージです。
ただ、あくまでも剥離されているヴィンテージの家具のメンテナンスなので、新品の輸入品や工場で塗膜をかけた製品として出来上がっているものはほぼ使わなくても大丈夫ですよ。
ーーヴィンテージ家具を購入された方はメンテナンスが必要ということですね。
バタフライチェアの魅力が引き立つ組み合わせとは
ーーバタフライチェアをダイニングセットとして購入されたい方もいると思うのですが、おすすめの組み合わせがあれば教えてください。
やはりこのドロップリーフテーブルとの組み合わせですね。
これは所謂イギリス人の考え方で作られていて、良い物を長く使うということに共通するのですが、家族の構成が変わっても扱いやすいように可変できるテーブルです。
ーーこちらも「アーコール」のテーブルですか?
はい。そうですよ。同じ「アーコール」なので統一感も生まれますよね。
ーー色も合わせて購入した方が良いですか?
やはりそれがベーシックですが、例えば一脚は自分の好みの椅子にしたり、着色に関してもブラックや他の色を入れ、カラーコーディネートを楽しむという方法も面白いと思いますよ。
ヴィンテージチェアになり得る家具の可能性
ーー最後に改めてこのバタフライチェアを咲寿さんがおすすめする理由教えてください。
本当に愛着を持って眺めていられる椅子ですし、今度はそれを大切に長く愛でていく事でヴィンテージになり得る家具なんですね。
世の中にはたくさんの家具や椅子がありますが、本当にヴィンテージになり得る家具がどれほどあるのか。というとそれほど多くはありません。30年40年もしくは50年経った時にまだそれが価値として見出される椅子だと考えていただけると嬉しいですし、一脚持っていただいて大切に使っていく、その全てがまた付加価値となりヴィンテージになり得るという事を楽しめる椅子かなと思います。
SHOP NAME | Daniel(ダニエル) |
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TEL | 045-661-1171 |
ADDRESS | 横浜市中区元町3丁目126番地 |
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OPEN | 10:30 - 19:00 |
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