インテリア雑誌を広げれば必ず目にする【北欧家具】の文字
そんな北欧家具の巨匠であるハンス・J・ウェグナーをご紹介していこうと思います。
家具は奥が深く、インテリア雑誌を開いても説明なく知っている前提で話が進みます。
私は長年家具業界にいると、とても不親切だと感じるので少しわかりやすく記事を書いていこうと思います。
さて、前回おすすめダイニングチェアでご紹介をした【Yチェア】の作家はこのハンス・J・ウェグナーというデザイナーです。
椅子を中心にデザインをされ、生み出された椅子の数は数えきれません。
そして、いまだに世に出ていないデザインも多いのです。
ウェグナーの椅子は様々な工房で作成をされており、有名なのが「カールハンセン」と「PPモブラー」です。
ちなみにYチェアはカールハンセンから販売をされており、普及の名作として知られています。
一度覚えてしまえば、ドラマや映画、雑誌にホテルと至る所でYチェアを見つける事ができるでしょう。
しかし、ウェグナーのデビューはYチェアではなく「pp501/503」その名も 【THE CHAIR】という椅子で一躍脚光をあびました。
それは1960年のこと。
当時アメリカではケネディとニクソンが大統領選を戦っていた真っ最中の時です。アメリカで初めてテレビで互いの意見をぶつける討論会が行われ、国民も興味を持って画面にくいついていました。
ケネディは、その討論会でのイメージ戦略に成功。
国民の支持を集めて見事大統領選挙に打ち勝つわけですが、スマートで品格あふれるその姿を国民の目に焼き付けたのは、一脚の椅子【THE CHAIR】です。
当時ケネディはどのように対談をすれば、国民の目を釘付けにできるかを考え、着目をしたのが「椅子」でした。
そして、世界から数十の椅子をかき集め、その中で【THE CHAIR】を選んだのです。
【THE CHAIR】は座っている人を引き立て、そして上質な質感を持っています。
ケネディは一眼で【THE CHAIR】を選び、ついに大統領の座を勝ち取る事ができたのです。
ここからウェグナーは世界から脚光を浴びる事になり続々と名作チェアが生まれていきました。
このTHE CHAIRは様々なデザイナーに愛され、派生をしていきます。
例えば、マルニ木工も『HIROSHIMA』も強いインスピレーションを受けている事がみて取れます。
話は、ウェグナーが活躍をするデンマークのお話に移りますが、デンマークの家具には「ソープ仕上げ」や椅子の座面が「ペーパーコード」という紙でできている事はご存知でしょうか?
ソープ仕上げはその名の通り、石鹸です。
家具の表面に石鹸でコーティングをし、家具を守っています。
そして座面は紙をロープ状に加工をし、巻きつけて強度を出しています。
なぜ、こんな事をしているのでしょうか?
家具の塗装や座面はよく「オイル塗装」であったり「皮」を使っている事が多いのですが、実はデンマークは当時とてもお金がない国でした。
いかにしていい家具を作るかというのが常の課題です。
そこで、安価に手に入る「石鹸」と「紙」を選択したのが特徴の一つ。
現在では、オイル仕上げや座面が皮の製品もラインナップとして出ていますが、ウェグナーマニアの方は「ソープ仕上げ」「ペーパーコード」を選択します。
そして、デンマークは「オーク」が有名なのでバリエーションの中に必ずオークが入っている事も特徴です。
ここからおすすめのウェグナー作品を5つご紹介できればと思います。
Carl Hansen & Søn-カールハンセン-
Yチェア
先ほどもご紹介を名作中の名作中の名作
世界で一番売れている椅子だとも言われています。
材質も様々あり、限定のカラーバリエーションなども販売しております。
いつかは欲しいダイニングチェアの一つですね。
歴史も長い為、ビンテージとして取り扱いもあるのでお気に入りの一脚を見つけてみてはいかがでしょうか?
CH23
1950年に発表されたハンス J. ウェグナーのダイニングチェア CH23、明快でオーガニックなライン、洗練された斬新なスタイル、クラフトマンシップ溢れるウェグナー初期の名作です。
PPmobler-ppモブラー-
PP503 THE Chair
先ほどご紹介をした【THE CHAIR】
ウェグナーの名前を世界に知らしめた最高傑作。
これまで名作を数多く排出してきたチェアの中でも最も完成度が高いと言われる美しさと、数多くの逸話から世界中から愛されています。
pp19 (ベアチェア)
ヤシの繊維や馬の毛などの自然由来のクッションで造られているので、ウレタンのようにヘタリがなく、様々な姿勢で座っても身体を支えてくれるこのベアチェア
価格としても大変高価な椅子ではありますがおすすめの一脚です。
家具好きには憧れのイージーチェアである事は間違いありません。
PP701
ウェグナーが奥様の為にデザインをした椅子で有名です。
自宅にもこのPP701が置かれています。
ウェグナーにどの椅子が一番気に入っているかと質問をした際
「どれも我が子のようなもの、だから一番なんて決められないよ」と言っていたそうです。
すると隣にいた奥様は「私はこの椅子が一番好きだわ」と。
なんだかとても素敵なお話ではないでしょうか?
私もいつかこのPP701を奥さんにプレゼントしたいものです。
さて、いかがでしたでしょうか?
少しウェグナーについて興味を持っていただけたでしょうか。
ウェグナーには語り尽くせない魅了があり、実際に座ってみると体の構造を考えられながら一脚一脚をデザインをしていた事がよくわかります。
是非一度、ウェグナーの椅子を見かけた際には座ってみてください。
椅子は決して見た目だけがデザインではありません。
長時間座り、時間と共に変化する経年変化を楽しみながら育てていく楽しみもあります。
皆様にもお気に入りの椅子を見つけていただければいいなと思います。