職人体験記

工房訪問!『Hanamame』三浦さんにインタビュー!『生木加工に魅せられた木工職人』

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「Hnamame」工房訪問記

今回はHanamameを訪問し、三浦さんにいろいろと聞いてきました。Hnamameならではの雰囲気をご確認下さい!

工房はいつから始められたのでしょうか?

作品づくり自体は、この家を建てたところから始まります。
家の外観は住宅メーカーさんにお願いして、内装や外の作業小屋スペースは自分で作りました。そこがスタートですね。

工房を建てるところから始めるなんてすごいですね。

そうですね。今いるこの土間を、作業場所として使いたかったんです。
最初はオープン工房として、この土間を作業場として使っていました。
そのうち段々と商品を制作する機材がそろってきて、今のように作り続けるきっかけになったのがこの木のマグです!

 

 

木製マグの作家さんをあまり聞かないのですが、ほかにも職人さんはいらっしゃるのでしょうか?

マグ作家といえるのは3、4人程度ではないかと思います。
ただほとんどの方は家具がメインで、かたわらでマグを作るような方が多いです。
 

 

木のマグを作られている職人さんや作家さんは少ないのですね。

そうだと思います。それにマグの種類も職人さんによって違います。
僕は生活雑貨として普段の生活で使えるマグを作っています。
ほかの方はアートととして作っているので、一点がとても高価なものになります。
木のマグは制作にどうしても手間がかかるので、まともに値段をつけると3万、4万と高額に。個人作家だとなかなか難しいですよ。だからマグの作家さんは家具を作るかたわらでマグを作るんですよね。僕の場合はほかに器を作っています。

三浦さんは器も作られているのですね。

そうです。もともとは刳物(くりもの)で食器を作ってました。
八王子にはいろいろな作家さんがいます。
初期の頃は特に、ネイチャークラフト作家の長野修平さんのアトリエで使っていた木や竹の器に感動して、完全手作業の刳物でマグやお皿を作っていました。長野さんは自然の形を最大限生かした作品を創造する天才で、今でも年に数回交流しています。生活や作品など、さまざま面で影響を受けていますね。
そのうち、オーダーは増えるのに全く量産できず、困っていた時に、ウッドターニングで有名な須田二郎さんに出会いました。須田さんに生木を用いたウッドターニングの技術を教えてもらい、本格的に器を作るようになりました。それと同時に木のマグの作業効率も向上したんです。

みなさんマグの制作を続けることに苦戦されてらっしゃるんですね。
ウッドターニングとはどういう技術ですか?

木工旋盤を使って木材を回転させながら削り出していく技法です。
木のマグよりも簡単にできるので、マグよりもたくさん作ることができます。
今ちょうど作っている段階の作品がありますよ。これが仕上げ前のものです。
 


 

とてもきれいなお皿ですね。

ありがとうございます。ここからオイル仕上げをしていきます。
でき上がった器もあるので、せっかくですから見比べてみてください。

 


 

これがオイル仕上げの前後ですか?
仕上げ前でも十分きれいでしたが、表情が全く違いますね。

全く違いますよね。
このお皿は、こうやって歪んでいるのが特徴なんです。
これは西洋の技術で、日本のろくろとはまた違った作り方ですね。
 

このお皿の歪みは日本ではあまりみられませんね。何が違うのでしょうか?

日本の木工は、乾燥材の中心材を使うのが一般的です。
ですが海外の木工ではグリーンウッドワークというジャンルがものすごく流行っています。

 

グリーンウッドワークとはどういう工作方法ですか?

簡単にいうと、生木を伐り出し、生木のうちに彫ったり削ったりして小物や家具を作る木工のことです。
材の乾燥によって生じる収縮も作品作りに利用します。例えば材の中心も外側も全ての材料を使って作品にする。そうすることで乾燥させた時に歪みが出てきて、独特の風合いに仕上がります。そのように、作った後にも楽しむことができる世界です。
日本の木工や建築の考え方は、まっすぐはまっすぐ、まん丸はまん丸。完成形を決めて規格品を作っていくことがメイン。
グリーンウッドワークは、丸太の大きさに合わせてサイズが決まり、木をいつごろ使うのかで形が変わります。そのようにひとつひとつ変化を楽しむことができるのです。

 


 

材料次第で完成後に変化していくとは面白い作り方ですね。

そうですね。このジャンルの作家さんは結構増えてきていると思いますが、日本ではまだまだ少ないですよ。
 

初めて作家になろうと思われたいつ頃ですか?

実は僕、ほかでも仕事をしているんですよ。大学で食品化学を教えています。
 

え?!大学で講師をされているのですか?

はい。ハム、ソーセージ、ベーコン、チーズ作りの研究者なんですよ。
 


 

それはビックリしました!そこからどうして作家になろうと?

実は勉強が大好きで大学の先生になったわけではないんです。もともと好きなのは、モノづくりです。
当時は食品に興味があったので、ハムやベーコンなどの畜産食品をずっと研究していました。「将来この分野でモノづくりをしていくんだろうな」と考えていたのですが、途中で「どれだけプロダクトを作っても食品は僕のものにならないじゃないか」という気持ちがこみ上げてきました。モノづくりがしたいのに自分のものにならないことがとても歯がゆくて……それで今、こうしてマグやお皿の作家として活動しているんです。

 

なるほど。食品だとなくなりますもんね。
食品化学の研究と木のマグや器を作ることはどうつながったのですか?

作家になろうと思った時、今の家に引っ越してきて薪ストーブを入れたんですよ。
薪ストーブなので燃料として丸太を用意しますよね。そこで、薪割をしたら、割った丸太がとても瑞々しい状態だったんです。木材は、基本的に乾燥しているものをイメージすると思います。でも、本当に生きているような生の素材感があり、その「生の素材」という感覚が畜産食品に通じていると感じました。ハムやベーコンを作ることも豚の解体から始めます。だからどちらも同じ「生き物を扱っている」感覚といえばいいんですかね。

 


 

木を「生き物」と捉えられる瞬間があったんですね!

妻が陶芸をしていたので陶芸も選択肢として考えましたが、やはり少し違いました。
丸太を割った時の瑞々しい素材が作品に変わっていく喜びには勝てませんでしたね。

 

そんな技術を教えてくださった師匠である須田二郎さんにはどうやって弟子入りされたのですか?

僕は個人的に「必要な時に、必要な人に出会う」と考えています。
須田二郎さんはこの業界では超ビッグネーム。もちろん今もとても有名で、工房を訪れる人が絶えないくらい人気の作家さんです。だけど無理やり「弟子にしてください!」と行かなくても「必要だったら須田さんとも出会うだろう」という気持ちでいました。
そんなある日、僕が作品に使う生の丸太を探しに行ったら……そこにいたんですよ!
ただ、当時は今ほどメディアが発達していなかったので、名前は知っていましたが風貌や顔は分からなかったんです。でも明らかに達人感のある人がいて。

 


 

もしかして、その人が須田二郎さんだったってことですか?

その通りです。それでお話をしたら工房に誘ってくれました。
須田さんは完全に職人肌の人なので、教えるなんてことは一切無く、作っているところを見せるだけ。それで、見せてもらいながら質問して学んでいきました。
そんな付き合いが続いて、須田さんが個展をされた時、弟子だと紹介されたんです。
 

弟子入りしているのか、自分でもわかっていなかったのですね!

須田さんが「俺の弟子だから」と紹介して回ってくれました。だから自分で弟子になったわけではなく……もう、運命でしたね。
 

まさに運命ですね。

間違いなく運命だったと僕も感じています。とにかく独特な作家さんなので、合う合わないも多い。だから離れる人もいるんです。非常に職人気質で、つきっきりで教えるような人ではありませんから。
教科書的に教えてほしいのか、見て盗んで作品にするのかで作品のできが変わってくるのだと思います。だからこそ僕は、須田さんのことを面白いと思うし師匠だと思っています。

 

ありがとうございます。
次に作品をご紹介いただけますか?

まず一点目は、コーヒードリッパーをご紹介しますね。
 


 

インパクトのあるデザインですね!三浦さんのこだわりを教えていただけますか?

コーヒードリッパーって、シュッとしたスタイリッシュな物が多いですよね。とにかくそれとは反するもの、というか絶対にない形を作ろうとしたのがきっかけです。
 


 

確かに。全然見たことがない形のドリッパーです。

一見簡単に見えますが、技術的にも恐らく真似しづらいものです。素材選びや技術に結構ハードルがあります。
だから僕のインスタを見て「真似させてもらいます」と連絡がくることがあるのですが、できた人はいないですね。

 

真似しようとする人がいるのですね。

パッと見て「いいな」と思って真似をするのだと思いますが、難しいと思います。
部分的にどうしているかという工夫もありますし、大きな機械も必要ですし。
あとは素材。割れがない状態の大きい丸太の塊が必要で、切るのも難しいですからね。
 


 

確かに、パッと見と実際に作るのとでは全然違いますもんね。

「絶対にないものを作ろう」と思ってこのドリッパーを作ったので。
そうしたら段々とプロの方が評価してくれるようになりました。量は少ないですが増産するようにも。

 

たくさん作るのは難しくないですか?

そうですね。例えば「このくらい作ってほしい」と言われれば、その個数はできると思いますが、そうすると今度はマグや器が作れなくなってしまいます。
やっぱりほかの作品も作らないといけないので。
 

このドリッパーで、ほかにこだわっている部分はどこですか?

ドリップの角度ですね。こだわりのあるデザインだと、人によっては逆に不満のでる部分かもしれません。僕はHARIOのドリップに合わせて作っています。HARIO式は初めてでも使いやすいですし、機能が保証されていますからね。
 


 

 

あとはデザイン的に付加された機能ですが、ドリップ部分が木に覆われているので保温された状態になります。輪っかのドリッパーだと、温度差がでて味が変わってしまうんです。コーヒーのプロに聞きました。
 


 

このデザインが結果的にコーヒーの味にもつながっているんですね。

そうです。保温してドリップ中の温度を安定させることは、コーヒーの味にとても重要なこと。コーヒー自体は専門家ではないので、初めはそういうつもりで作っていなかったのですが。実際に専門家の方にアドバイスをもらって加工を変え、今の形になりました。
素材によって高さもサイズも変わりますので一点ずつ全部違います。
その中で、自分の好みの素材やサイズを選んでもらえたら楽しいと思います。
 

 

ありがとうございます。ほかのオススメ作品を教えていただけますか?

この木のマグですね。
 


 

マグはドリッパーとは異なり、なるべく普通のデザインを心がけています。
従来のククサ(白樺のカップ)や、アート的なククサはデザイン的にはとても魅力的でかわいい。ただ、普段の食卓で使うには少し違和感があるんです。主張が強すぎるというか。
だから僕のマグは、食卓で普段使うことを考えて作っています。
お客さまも意外と主婦の方が多いんですよ。

 


 

確かにシンプルですね!普段、自宅で使う時に自然とその空間に調和しそうです。ほかにもこだわりがあれば教えていただけますか?

マグなので、ハンドルの作りも持ちやすくてマグらしいものを心がけて作っています。
ハンドルはアート的にできる部分ではありますが、持ち手なので使いやすい形がいいですよね。

 


 


 

あとは価格面で、ほかの作家さんと比べると僕の作品は抑えられているかなと思います。もちろん既成のマグのような価格とはいきませんが。アート的な素晴らしい作品は、価格も上がってしまい、普段の食卓で使うのは少し難しいかなと思います。
 

価格を抑えて作れる理由は、シンプルなデザインのほかにもあるのでしょうか?

理由としては、乾燥させる前の丸太を使うため材料費が安価にすむからです。その分、加工は大変なんですけどね。
家具を作る時は基本的に加工され乾燥した材を使うので、どうしても材料費が高くなってしまいます。

 


 

生の丸太を使うメリットが価格にもあるとは!!

今のところ、生の丸太を使ってマグを作っているのは僕だけじゃないかな。価格以外にも生の丸太を使う面白さもあります。生の丸太を使うことで乾燥させるときに歪みが出るんですよ。
 


 

「完全な丸じゃない」ものが自然に作れます。
カチッとしすぎないというか自然にこういう形になるのが、僕の作るマグの特徴かなと思います。

 


 


 

ありがとうございます。次に工房を紹介していただけますか?

はい。それではまずは刻み場から案内しますね。
ここで、ある程度のサイズに丸太をカットします。
生の丸太は、仕入れてから3週間以内に使わないと使えなくなってします。

 


 

3週間で使えなくなってしまうのですか?

そうなんです。乾燥して割れてしまうと使えなくなります。
ほかにも、色が変わってしまうことも。本当に鮮度勝負というか、食品と一緒ですね。
 


 

ただ、割れたから全部が使えないわけではなく、そこから数センチカットすると割れていない部分が出てくるので、その割れていない部分は使えます。
 


 

そうなんですね。その割れていない部分の見極めが難しそうですね。

それは完全に経験ですね。
割れの大きさや深さで感覚的にわかるようになります。
普通の木工なら、好きな木材を選んでくればいいのですが、生の丸太は「ここが割れてきているから早く加工しよう」とか、使える部分を見越して割れている部分を削るなど、考えることがたくさんあって手間がかかりますね。

 


 
次に、ここでカットした材を上の工房で加工していきます。

上には2つの工房があります。先にこちらから紹介しますね。

 


 

こちらはサンディングやちょっとした加工をする場所です。あとは妻の陶器工房にもなっています。

 

工程によって工房が分かれているのですね。

そうですね。そして最後にメインの工房です。
 


 


 

ここで、カットした材を木工旋盤と呼ばれる機械で削っていきます。
 

 

これは彫る時に使う研ぎ用の水砥石。刃物の切れ味が一番大事なので、砥石は作品をつくる上でとても重要なもののひとつです。
 

 

この、上のスクリーンはなんだと思いますか?
 


 

全然わからないです。何に使われているのですか?

これは、削る時に丸太から出るしぶきをガードするものなんです。
 


 

生木を削るとこんなにしぶきが飛ぶものなんですか!?

そうなんですよ。すごいですよね?やっぱり生きているんですよ。
べちゃべちゃに濡れながら木を加工する発想って普通ないですよね。
 


 

全くないですね。こんなにしぶきが飛ぶなんて考えたこともありませんでした。

そうだと思います。馴染みが薄いからこそ、このあたりのことに興味を持って広く知ってほしいなと思います。まだまだやっている作家さんも少ない業界なので、少しでも興味を持つ人が増えると嬉しいですね。
 


 

このコラムから少しでも広められたら僕も嬉しいです。ありがとうございます。
最後にコラムの読者に一言お願いします!

僕のマグは、できた瞬間は丸いです。それが乾燥とともに自然に歪んでいって、木が一番楽な形になります。その形は人間には真似のできないもの。その美しさを感じてもらえたら嬉しいです。そのためにも、一番は作品を見にきてほしいですね。

「ネットで注文できますか」と尋ねられることもありますが、ネット注文はタイミング次第とさせていただいています。一点ずつ表情が違うので、できることなら工房を訪れて、じかに作品を見て選んでほしいです。
 

三浦さんありがとうございました!

工房Hnamane
東京都八王子市
お問い合わせはInstagramDMまでお願いいたします。

 
 

Writer Profile


Takuto Suzuki
Inte-code.inc所属のインテリアコーディネーター。1991年静岡県生まれ。北欧インテリアショップの販売職を経て、inte-codeで空間のコーディネートを行う。その経験をもとにインテリアショップ体験記の運営、取材を担当。

 

Yoshiaki Ogiwara
インテリアショップ体験記のカメラマン、編集、取材を担当。
アパレル業界で10年働いた後、現在インテリアの勉強をしながら独立に向けて日々精進中。

 

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